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少女ネイビーとシャングリラ  作者: オカダ倭
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実際「お前ボールな!」が起こったら殺人事件

レイというブレーンを得た俺は、ことの経緯を説明した。

流石のレイもこの証拠量じゃ犯人特定とはいかないらしく、地道に探すしか無さそうだった。

まずは教室棟。一回から四階まであるホームルームが集まっている棟。一階は一年生というわけではなく、その逆、一年生が四階という構造になっている。

四階を探す。あれほどに大きなものだから、見逃すなんてことはないと思うが、見つけることはできなかった。

三階、二年生の教室が密集している。中には文化祭の準備をしているクラスもあったが、ほとんどのクラスは自習室として開放されているようで、勉強をしている人がたくさんいた。なんだか上の階が騒がしいようにも思えた。後でうちのクラスには注意をしておこう…。

レイもおんなじことを考えていたみたいで、「下の階まで聞こえる」とラインをしているみたいだった。俺もラインにしておくか。

そもそも準備をしているクラスが二つしかなく、やはりここにも、探し物はなさそうだった。

そして二階。

この学校の最上級生が使用している教室群。

受験生だから、三階とは比べ物にならないくらいの静謐さをまとった空気があると思っていただけに、俺は驚いてしまった。レイも同じ気持ちなようで、「意外と、楽しそうですね」なんて感想を漏らしていた。

たった二歳しか違わないというのに、選挙に行ける年齢になったというだけなのに、この大人っぽさは何なのだろう。

談笑をしているのに、手の動きは止まらない。

二年間やってきたというのは伊達ではないということだろう。

そして、一つ気になったのは、

「なんだか、おばけやしきをやるクラスが多いみたいですね」

そう、いくつもある教室。そのドアの部分を見ても、黒を基調とした『おばけやしき』感が溢れていた。血糊なんかを使っているのだろう。独特の香りがする。

「レイは、出し物決めの時いなかったんだもんな。知らないか」

「そうですね。親に呼び出されてしまって」

「まあ、つまりは最高学年には出し物の優先権が与えられていて、その中でも『お化け屋敷』は一番人気のアトラクションってことだよ。」

「そういうことでしたか」

きっと、お化け屋敷が人気なのは、比較的簡単で、それでいて運営するのが楽しいということがあるのだろう。驚かしてみたいという気持ちは誰しもありそうだ。

流石は三年生。装飾なんかも参考になるものが多い。ああ、そうやって窓のところに引っ掛ければ、それが立つのか……なんて感心していると、一人の小さい女の子が教室から出てきた。

「かわいこちゃんどうしたのかな? 迷子かな? 一緒に職員室行こうね~」

と俺は腰をかがめてその少女に職員室に行くように促す。小さい子にはこういう風に目線を合わせるといいと本に書いてあった気がする。

小さな女の子は心細かったのか、今にも泣きだしそうな顔をしていて―――なんてことはなかった。どちらかと言えば、少女の顔は赤く染まっていた。あれ――怒ってる?

「おぬしは! わしが! 先輩だということを忘れておるな!? 今日という今日は絶対にゆるさん!」

近づけた顔、その鼻を引き抜かれるかのようにつままれ、そのまま俺はその少女に背負い投げをされた。

教室からは「恋ちゃんかっくい~」「かわいいよ、恋ちゃん♡」みたいな野次が聞こえる。

「わしは柔道が得意なんじゃ。今度同じことをしたら――」

廊下に大の字に寝転がる俺の上で腕組をしてにらみつける恋先輩。

「先輩。今日のパンツもかわいいっすね」

怒りとは違う、羞恥で顔から火を噴いた先輩。

俺は頭をインステップでシュートされた。

先輩。俺死んじゃいますって。

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