ごっこ遊びは時に本質を突く
壁は何枚あっても困らない。もし、犯人を見つけ、最初の二日間で作った壁が戻ってきたとしても、いくらでも使い道がある。
それに、悪いことは、悪いことだ。
ただここが学校であるというだけで、やっていることは法律で裁かれるべき様なことであるはずだろう。
大体大きさは高さ二メートルくらい。幅は一メートルくらいの長方形だ。そしてその枠の下の部分には脚とも呼ぶべき三角の部分がついている。教室にある机などである程度立てかけられると言っても、二メートルの大きさになると自立しなければならないということだろう。河合が設計した。
その大きさのものを移動させるためには、最低でも三人必要じゃないだろうか。もし足の部分を分解するとすれば二人。一人はそれらを外せる人物。掃除したとも考えられるが、木くずなどが落ちていなかったことから綺麗に足の部分を外せるような手慣れた人物。
それが犯人像。きっと男子。
とりあえず、同じ階の教室はすべて回った。隣のクラスは縁日モチーフの屋台をやるらしい。昔懐かしいスパーボールすくいなんかがセッティングされていた。あれ、俺滅茶苦茶得意。
そして、廊下を歩いていくと、レイの教室があった。確かあいつのクラスはメイドカフェをやるなんて言っていたっけな。しかも男女が逆転した。
偵察兼にぎやかしに行こうと思ったら、ぬっと教室からデカい男が出てきた。身長は俺より頭一個分大きく、肩幅なんかは俺の二倍じゃきかないくらいにデカい男だった。
「いらっしゃいませ、ご主人様」
そんな低い声で言われても、全然上がらねえ……。
筋肉自慢のメイドとかどの世界に需要があるんだよ……。お前ここが学校だからいいけど、外でやるなよ?絶対に捕まるから。
「まあ、まあ、洸祐さんも怖がっているのでやめましょうよ、森本君」
このデカい男は森本というらしい。後ろからレイがひょっこり出てくる。目の前のこいつがデカすぎて、レイが全く見えなかった。瞬間移動してきたかと思った。
「そ、そうか。結構かわいく言ったつもりなんだけどな……」
と森本と呼ばれたメイドハルクは教室の中に消えていった。
「何かうちのクラスに用ですか? ご主人様」
黒を基調としたスカートに白のレースがあしらわれていた。それをわざとらしくつまんで気品のあるふりをして見せるレイ。妙に堂に行っているのは、本物のメイドを見てきたからだろうか。
「ちょうどいい。レイ、ちょっと一時間くらい抜けられるか?」
「まあ、今日は衣装合わせだけなので、大丈夫ですが……藍子さんは?」
「あいつは、教室でカリスマ性を十分に発揮してくれたよ。教室はあいつ一人で十分だ」
「ならいいですけど。それで、何を?」
強いて言うなら。
「探偵ごっこってところだろうな」