尊敬している人への期待のようなもの
とどのつまり、先生は俺たちのことを人件費削減のために使うということだろう。手間が増えると言っていたしな。
「でもこれってチャンスじゃないですか?」
「というと?」
「だってこうして一緒に働くことができれば、この学校の生徒のほとんどが利用する学食で顔を売れるわけですから。お盆かなんかに、公約をまとめたチラシなんかを挟めば、選挙効果抜群じゃないですか!」
レイは興奮した様子で藍子に向かって熱弁をしていた。すごい、確かにそうだ。もしかしてこれを見越しての採用ということだったのか?と俺が藍子の方に向き直ると、
「そそそそそ、そうね。そんなのは初めから考えていたわよ?だから採用したんだもの!」
うん。きっとこいつ今「それもーらーいー」なんて思いながら納得しているんだろうな。さすがは政界の血筋だ。もしかしたらレイが総理大臣になっちゃうんじゃないか?と思うくらいに頭が切れる奴だと思う。
「ひとまず部室に戻りましょう。ここは暑くて死んでしまうわ」
職員室が涼しかったということもあって、廊下は灼熱のように感じられた。部室にはもちろんエアコンなんてついていないのだけれど、この時間帯は日が差し込まないので、暗いは暗いが、比較的涼しくなっているはずだ。
レイが、ちょっとと言って、俺に耳打ちしてくる。
目の前をずんずんと歩く藍子には聞こえないように、ということだろうか。
「洸祐さんは、何か案はないんですか?」
何だよ。そんなことかよ。
耳打ちするから、何か藍子の下着が透けているとかどうでもいいことかと思ったんだけどな。
「そんなのねえよ。学食とクーラーで十分じゃないか?」
「まあ、洸祐さんがそれならいいですけれど。でも、藍子さん、少し悲しそうな顔をしてましたよ?」
「……?なんで藍子が悲しそうな顔をするんだよ。」
「さあ。それは洸祐さんの方がわかるんじゃないですか?幼馴染なんですし」
と、藍子がこっちを振り返ったので、俺たちは「何もしてないよ」という風に装って見せた。
「なによ」
何やらぷんぷんとしている藍子様。
「なんでも」
と俺とレイが珍しく声を合わせて言うと、
「そ」と言って藍子は癇に障ったのか、もっとずんずんと歩いて行ってしまった。
よくわからねえ……。