人件費をケチろうとするやつは何やってもダメ
それから職員室に島村先生を探しに行った。そしたら先生は遅めの、というかほとんど夕食みたいなものを食べている最中だった。パソコンとにらめっこしながら、小さな弁当箱をつついている。
「ああ、こんな格好でごめんなさいね。一応仕事は終わっている体だから~スーツなんて着てらんないわよね~」
島村先生は最後の唐揚げの一つを食べて、こちらに向き直る。初めて会ったが、なんともベテランという感じの先生で、おっとりとしたと妙さんが言っていた通り、間延びした話し方をする人だなと思った。
スーツは椅子に掛けられていた。そしてジャージ姿になって、靴はサンダルだった。ザ・ラフ!という感じの格好だった。
「で~学食に新メニューを取り入れたい~?」
「そうです。すぐにとは言いません。大体今年の末くらいに導入できたらいいと思ってます」
どんなものを始めるにも時間がかかる。そしてそれ以上に文化祭が終わった後、年末にかけて行われる生徒会選挙くらいまでに導入されればいいということだろう。きっと藍子はそう思っている。
「そうねえ。急がなくていいなら、できないことはないと思うけれど~。何を導入したいの?」
「それは、ハーフサイズで―――」
女生徒には量が多いとか、そういうことを説明した。すると、柔和だった先生の顔がどんどん真剣なものに変わっていった。ジャージ姿で、そうは見えないけれど、島村先生もしっかりした大人なんだと、仕事で生きている人なんだと実感する。
藍子が説明し終わると、先生はメモを書いていた手を止めて、小さく「よし」と言って俺たちを順に見極めるように見た。
「わかったわ。いいでしょう。ハーフサイズ。値段も合わせて考えてみるわ~。でも、人件費とか、やってみなきゃわからないこともあるから、その時はお願い、ね?」




