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少女ネイビーとシャングリラ  作者: オカダ倭
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鬼に金棒、弁慶に薙刀、おばちゃんに笑顔

「……というわけなんですが、もし導入するとしたら、何か都合が悪そうなことはありますか?」

いち早く学食裏の厨房にたどり着いていた藍子が丁寧な物腰でおばちゃんたちに聞いていた。

一見常識に欠けていそうな藍子だが、こういうかしこまったこともできるのだ。俺は昔から「なんかずるい」と思っている。外面がいいということだ。

「そうねえ。あ、レイ君こんにちわ。今日もカッコいいわね――じゃなくて、ハーフサイズの事よね?」

「こんにちわ、妙さん。今日もお綺麗ですね」

妙さんと呼ばれたおばちゃんは、いや、お姉さんはまんざらでもない様子でにんまりしていた。こいつ年齢問わずこうなのか……。

「一回、持ちかけられたことがあったのよ。量も多いし、半分のサイズが欲しいって。でもねえ、半分になったからって言っても値段を半分にするわけにはいかないし……しかも、結構手間なのよ。だからあと一人バイトの子を増やすといっても、昼間に働ける人って限られてくるのよね……」

ホワイトボードに書いたときはそこそこいい案だと思ったけれど、こうして現場の声を聞くと不備だらけだったということが良くわかる。

金額面、でもオペレーションでも、ままならないものだ。

この学食のおばちゃんたちは、学校側で雇っているらしく、給料という形で金銭が支払われているらしい。だから値段を下げたりするのは、できないことはないが、多分店長、というか学食長に掛け合ってみないことにはわからないということだった。

「その学食長っていうのは、誰かの親御さんだったりするんでしょうか?」

俺は聞いた。それならば、子供にアポを取れば会いやすいと思った。

「いやいや、違うわよ。学食長って言っても、ただ学校側の人だからよ。確か家庭科の先生をしているって言ってたかしらね。えーと、名前は……」

「島村あかね先生。今は三年生の担任もしているはずよ」

藍子がすっぱりといった。こいつもしかしてあの複雑な学校の組織図きちんと暗記しているんじゃなかろうな。俺が考えていることが伝わったのか、藍子は「もちろん」とさも当たり前かのよう気にも留めない様子だった。

「そうそう!あかり先生。ちょっとおっとりした人でね。最近はあんまりこっちに顔出さないから、気になっていたのよ。話を聞くならそっちの方がいいと思うわよ。仕入れとか収支とかはあの人がやっているはずだしね」

最近物忘れが激しいのよ~なんて笑っている妙さん。苗字は白井というらしい。名札にそう書いてあった。奇麗な名前だと思う。

「ありがとうございます。また何かあったら来てもいいですか?」

でた、藍子の必殺技「上目遣い」。これで中学校の先生方は何度藍子のわがままに付き合わされたことか。かわいそうに。

「全然いいわよ。レイ君も、そこの坊やもいつでもいらっしゃいな。プリンくらいなら出せるからね!」




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