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少女ネイビーとシャングリラ  作者: オカダ倭
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今時クーラーのない学校は地獄と言っていい

期末テストが終わり、藍子はよい成績を修め、俺は情けない成績を収めた。レイは成績なんて関係ないという風に、無頓着な様子だった。

七月第一週が終われば、すぐに夏休みに向けて学校は様相を変える。

寒くなってきたとき用のブレザーとかセーターとかはロッカーから消え去り、その代わりに文化祭の小道具なんかが無造作に詰め込まれている状態になった。プールの塩素の香りと、段ボールと接着剤の香りが入り混じる教室で、終業式後の先生の有難い言葉をいただく儀式があった。

「えー適度に羽目を外しておくように。来年から受験勉強が始まるからな。今年はやり残すことがないようにやりたいことはこの夏にやっておけよー」

この学校は一応進学校だから、二年生から本格的に受験勉強が始まる。一年のうちに高校の範囲をほとんど終えてしまうというのだから、中学ではそこそこの成績を誇っていた俺がついていけないのもしょうがないというものだ。俺は勤勉な方じゃないからな。

それに対して藍子とか、レイとかは素直にすごいと思う。ついていくどころか引っ張っていってるんだもんな。住む世界が違う。

まあ今年はそんな難しいことを考えずに、夏を満喫するとするか、なんてのんきなことを考えていると、藍子に背中をつつかれた。席替えで藍子は俺の後ろになったのだ。窓際最後尾が藍子で、俺がその前。ことあるごとにこうしてちょっかいをかけてくる。

「今日は部室に集合しなさい。今後の方針を決めるわ」

「へいへい」

有難い言葉も無事に終了したらしく、皆が席を立ち始める。「夏休みだー」なんて叫んでいる奴までいる。確かあいつは赤点をとって補習だったはずなのだが。

「じゃあ行くか」

もうワイシャツを脱ぎ、部活動の格好になっている運動部の奴らを尻目に、俺と藍子は部室へと向かう。ついでにレイも拾っていくとするか。


「本日の議題は、公約についてよ」

くるりとホワイトボードを回転させて藍子は言った。叩いたもんだから、ぎしぎしと音を立てている。古い備品なんだからもう少し丁寧にだな…。

「それは生徒会選挙に向けたものでしょうか。でしたら、この九月の文化祭を成功に収めれば自動的になれるはずでは?」

「そう言ってたな。恋先輩も」

文化祭は生徒会の一大イベントだから、それを手伝うことは生徒会への橋渡しになるということだったはずだ。報酬として、生徒会の席が用意される、とも。

でも、藍子はそんなことはお構いなしらしい。

「そんな名ばかりの生徒会になったところで意味がないわ。実績を作らなきゃ。俗にいうガクチカってやつね」

ガクチカ?学校近くの略だろうか。駅近みたいな。

「学生時代力を入れたこと、の略称ですよ。よく企業面接などで聞かれるらしいです」

「物知りだな、レイは」

藍子は俺のことを「そんなことも知らないの?」という顔で睨んでいた。いやだから怖いって。やめてその顔。

「まあいいわ。洸祐が馬鹿なのは今に始まったことじゃないし……。とにかく、私はこの学校をより良い方向に変えていきたいというわけよ。身の回りを便利にして、結果が後からついてくる。これが私の理想とする政治よ」

だからね、と藍子はホワイトボードをくるりと回し、裏面の「不便なことリスト」と書かれたボードを見せる。

「今から三人で、この学校の不満を書き連ねていくわよ」

藍子は一番にホワイトボードマーカーを取って、一番上に一つの不満を書く。

――ああ、それは本当に俺も思うところだ。一番上に書くのは納得いく。

藍子は、一番上に

「クーラー!!!!!!!!!!!!!!!!」

とこれでもかというくらいにエクスクラメーションマークを並べていった。

本当にこの学校は暑い。



六十話目。なかなか今まで続いてきた習慣を持ち合わせていない私ですが、最近はライフワークの一つとなり始めていて「習慣は第二の天性」っていうよね!?私天才!?みたいな感じで浮かれています。こんな奴が天才なわけないですね。すみません。

まだまだ続いていくので、よろしくお願いします。何卒。

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