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少女ネイビーとシャングリラ  作者: オカダ倭
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間章 「私」の能力

それから俺は「私」になった。

無事に俺は家庭科の島村先生のことを裏切り、家庭科の単位を落とした。

学年主任にも、校長にも詰め寄られたけれど、俺は動じることはなかった。なんてカッコつけたいんだけど、それは中々厳しかった。本当に怖かったからだ。ちびった。

四年生になるにあたって、俺は家族と縁を切らなければならなかった。兄さんがいればいいだろう。俺はお払い箱になった。たった兄さんの代わりになるということすらできなかったのだ。

だから俺は「私」になった。

髪は何故だか俺が伸びろと思うほどに伸び続けたし、学費を確保するために始めた株も、なかなかに成功を収めている。自分一人くらい食いつないでいけるくらいには。

その伸び続ける髪に正当性を持たせるために、俺は一人称を「私」にしなければならなかった。これはもしかすると周りの目を気にしてしまう日本人としての感性が働いた結果かもしれない。

あれから、俺から「私」になってから。

あのノートにこの髪についての記述があればと思って、理科実験室にいってあの二重底を気合で開けて、中身をこの前よりの入念に執拗に読んだ。

そして一つの結論に至った。

髪が伸びる理由。そしてケンジが俺の未来を見ることができない理由。

彼は生徒会長にはそういった能力があるという風に言っていたが、あれは偶々そうなったというだけの一時的なものだったのだ。

生徒会長に能力が宿るのではなく、このノートを見つけ、秘密を暴いた人物の潜在能力が解放されるというだけの事なのだ。

ただ、運命力とでも言うべきだろうか。その役職には、その能力を持った人物が付きやすいということは歴代生徒会の能力を見ても言えそうなものだった。実験としては、成功とは言い切れないまでも失敗ではないだろう。

かくいう俺の能力は、傾向からして、そして俺の人生からして、どういったものなのか。

それは

『自分がすべて思いのままになる』という能力だった。

――自分で言うのもなんだが、こんな能力でいいのだろうか。

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