間章 彼はその先を知っている
どうしてホットパンツをはいている彼女のパンツが見えたのかと言えば、それはもちろん、ホットパンツだから、それもパンツだということでは決してない……。
ただ彼女の華奢な細い足のおかげでホットパンツとの隙間が発生して、そして俺の強靭に鍛えられた動体視力がそれを見逃さなかったというだけの事である。男子高校生なめんな。ことパンツのことになればこんなに一生懸命になれるんだぜ。すごいだろ。
と一般男子高校生の生態について語ったところで、問題は足元にあるこれだ。
杠葉が言ったところを見計らって、俺は机の底に挟まっているその「マル秘」の紙を破れないよう、最新の注意を払って取り出す。
これほどの重量だ、少々敗れてしまったが、いいとしよう。
とても薄い、というか薄くなったのだろう、年代を感じる一冊のノートだった。所々黄ばんでいるし、古書店の香りがする。もしかしたら中に虫がいたりするかもしれない。
とりあえずパンパンとその埃を払い、少しの緊張を感じながら、その表紙をめくる。
引っ付いているのか、ベリリを音を立ててめくれた。
どこか他人の日記を除くときのような妙な緊張感を感じていた。
「生徒会の成立について……?」
と、そこには「生徒会の成立について」という論文のような重厚な文章があった。
今から数十年前に、この生徒会は成立したことや、そしてその生徒会は学校ができた当初に結成された生徒会とは一線を画すもので、特異なモノたちを集めたものである。大まかにそんな内容が書いてあった。
ページをめくる。歴代の生徒会の名簿が20年分くらいまとまっていた。中には政治家の名字でしか聞いたことがない苗字なんかもある。袖ケ浦。とか。確かこれは地名性だっただろうか。学の深くない俺ではわかりかねる。きっとケンジならわかるんだろうが……。
「そうだぜ、袖ケ浦は地名性だ。千葉県の木更津らへんだな」
俺は急いでその「マル秘」ノートを閉じ、隠すようにして背後に持って行った。
「大丈夫だよ、カイ。俺は知っているから。お前が今日ここでそのノートを見ることも、そして俺がその場に出くわすこともさ」
とケンジはいつものように、快活に言うのだった。
だが、見た目はケンジなのに、どこかその笑みには何かが含まれているような気がしてならなかった。「マル秘」と書かれたノートを握る手が脈打っていた。まるでそこに心臓があるかのように。