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少女ネイビーとシャングリラ  作者: オカダ倭
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間章 平等と公平は違う

「ではまず三人で押してみよう。こう、下から腰を入れて」

せーの、と男三人で動かすことを試みてみる。

だけど動く気配すらない。下一面がカーペットであるということも起因しているのだろう、摩擦が強い。まるで岩を押しているみたいだ。

「まるでだめじゃのう」

パタンと活動記録を閉じて、杠葉が涼し気な顔をして言う。

もちろんこの旧校舎にはエアコンなんて大層なものはついていない。なので頼れるのは自分たちの体温調節機能だけとなっていた。汗が止まらない。

鶴ヶ島のおかげで、うちわやらスポーツドリンクの粉などがあったので、何とか耐えられそうではあるが、それにしても、暑い。埼玉県風に言うとすれば、暑い暑すぎるといったところだろう。

「恋ちゃん~手伝ってくれよ~」

「いやじゃ。というか無駄じゃ。見よこの白くて細い腕を。こんな枝みたいな腕で何ができるというのじゃ口を慎め」

「いや、そんな言う?一応俺先輩だし、生徒会長なんだけれどな……」

なんてやり取りは五分前に済ませていた。恋ちゃんの役割としては、俺たちが倒れた際に救助を呼ぶ係りと、応援を呼ぶ係り、そして対抗策を考える係を兼任してもらっている。

「それにしても、冴ちゃんはどうしてこんなものを動かせると思ったんだろうな…」

とケンジがボソッと言う。確かにこれほどに大きな机だ。本当ならばしかるべき業者に頼んで、クレーンなんかを使って取り出すものじゃないだろうか。

「もしかすると、岩田先生もその依頼をしてきた校長先生も実物を見ていないんじゃないでしょうかね」

鶴ヶ島が不満をあらわにしている。

「でもそれなら、この机がアンティーク品なんてことはわからないんじゃないか?」

「……」

皆頭が回っていないらしく、話がほとんど進まなかった。

今は休憩中で、その動かない机をよそに、屋根のある玄関前に座り込んで、昼食を取っていた。近くのコンビニで買ってきたのだ。

俺はサンドイッチで、ケンジはがっつりパスタを食べている。鶴ヶ島は飲み物だけでいいというし、杠葉はアイスをかじっていた。個性が迸っているな。

このままではじり貧で、皆熱中症ということになりかねない――。

「最後に、その辺の鉄片を使って、てこで動かしてみよう。それでも動かなかったら――てこでも動かなかったら、今日は解散して、先生に俺が直談判しよう。こんなものは俺たちの手に余る、とな」

最後の一口をひょいと頬張り、俺は立ち上がった。

早食いのケンジも、大盛パスタをペロリと平らげ、、俺に続く。

もし動かなかったらもちろん帰るが、動いたとしたら、どうしようか。

「そしたら、適当な棒を下に突っ込んで転がすとか、やりようはいくらでもあるだろう」

確かにそうか。とても古典的な方法ではあるが、ここから運び出すならばそういった方法がいいだろう。三人寄れば文殊の知恵、とはよく言ったものだ。この場合四人なんだけれど。




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