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少女ネイビーとシャングリラ  作者: オカダ倭
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間章 迷惑なんてかけてなんぼだろ友達なら

翌日、生徒指導室に呼ばれた俺は、長くなった髪をきちんと束ね、そして前髪を目にかからないように整えた状態を、岩ちゃんに「かわいいね」という風に言われた。

美人の先生に言われるのはなんともこそばゆいものがあったが、本心から彼女が言っているということがわかると、悪い気はしなかった。

「別に男だから髪を長くしちゃダメなんてことは校則に書いてないしね。別にいいでしょ。何かあったら、私が言ったから、っていいなさい。ほとんどの先生は、私の父の権力に媚びを討っているから、大丈夫なはずだ」

「ありがとうございます」

俺が丁寧に頭をさげると、

「それにしてもいい髪ね、こんなに綺麗な髪、ほとんど出逢ったことはないな。自信を持つといい」

と、男子人気一番の先生は言うのだった。


「ところで、生徒会長が、整髪検査に引っ掛かるなんてことは、今までなかったってことは言っておかなければならないな。前代未聞とはこのことだね。まあ、あのハゲもうるさいことだし、一つだけ頼まれてくれるかい?」

「……それは甘んじて受け入れますが……なんかいかがわしい事なら俺は……」

「君、そういうの今はセクハラになるってことは知っているよな……? 第一、こんな未婚のおばさんを捕まえて何をしようっていうのかはわからないが。」

「別に俺がされるってだけで、先生はする側って言う話の流れだったはずでは……? 願望が透けて見えてますよ」

と、俺がからかうように言うと、疾風の拳が俺の顎の下まで襲ってきた。

音を置き去りにした……だと……?

「次はないと思え」

わずかに紅潮した頬で、そんなカッコいいことを先生は言う。

全く男子高校生というのは……なんてため息をついて、彼女は続ける。

「君にやってもらいたいのは、旧校舎の整理だよ。旧校舎は再来年に取り壊しが決まっているということは話に聞いているね?」

そういえば、それに関するお知らせが、回ってきていたはずだ。生徒会も、それに向けて生徒が立ち入りしないようにどう対策を講じるかという議題があったくらいだ。

「そこで、一つ、旧校舎の生徒会室の椅子や机が、年代物のアンティーク家具だってことが資料を見て判明したんだ。作者は何だったか、私は覚えていないが。君にはそれを運び出すのを手伝ってほしい。というか生徒会の人員を引っ張ってきてほしい。特に白井健司なんかは力持ちだろう?」

確かにケンジは力持ちだ。この前もベンチプレス90キロをあげることができたと話していたっけな。

「でも、俺一人の失態で、そんな面倒ごとに付き合わせるわけには……というか業者に頼めたりしないんですか?アンティークものなら、高価なんでしょう?素人がやっていいモノなんでしょうか」

と俺が聞くと、先生は「そんなのはどうだっていいさ」と

「別にあの校長の考えていることだ。『歴史ある伝統』とか意味わからないことを言って、今の生徒会の机やらをそれに置き換えたいだけだよ。彼は旧校舎に思い入れがあるからな。ちょっと傷がついているくらいでは『味がある』とか言ってわからないだろうよ」

――さすが権力者の娘だ。発言が大胆すぎる。

その美人な顔だちからは想像できないほどの毒舌が彼女の特徴だ。こういうところが彼女が男女問わずに支持されている要因なのかもしれないな。

「でも、全く君は現代の生徒像らしいな」

「何がですか?」

彼女がやれやれという風に言うので、俺は気になって聞いてみる。

「『面倒ごとに付き合わせるわけには』と君は言ったな?」

「確かに言いましたけど、それが?」

「いや、ただ、迷惑を掛け合うのが友人というものではないのか、と思ってね。今と昔では様相がガラッと変わってしまったから、私にはわからないがね。」

こんな年増の話なんて聞かない方が身のためなのかもな。なんて自虐的なことを言って、彼女は去っていった。

無骨なソファに一人腰掛ける俺。一人残された俺も、今日は帰ろうと鞄を肩にかけると

「迷惑、掛け合おうぜ、カイ。ただし、金は貸さん」

なんて、一番の親友が俺のことを待っていてくれるのだった。

全く、敵わない。

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