憧れは時に醜い
「俺は元々、生徒会なんて興味ないんで、やめろと言われればやめますよ」
「へ?」
あんなに大々的に登場して、しかも果し状まで書いてくれたというのに申し訳ないが、こんな面倒なこと、俺はすぐにでも降りたかった。
大体、俺は権力とかには興味がないのだ。ただ、藍子が『総理大臣部』なんてものを作りやがったから、仕方なく秘書をやっているし、彼女がまずは生徒会長になりたいと言うならば、俺は藍子が選挙に出るまでの土壌を作って置こうというくらいなのだ。
反対意見が出れば、それを受け入れる覚悟でいた。
だからまあ、この申し出は僥倖と言ってもいいかも知れなかった。
「だから、先輩がそう言うなら、すぐにでもやめますって。元々俺がやりたいと言うことではなかったですし」
先輩は、どうしてそんなことを?と言っていた。どこか顔色が悪いようにも見える。
「君は、この学校の生徒会という組織のことを知った上でそんなことを言っているのか……?あの成都海先輩に直接教わらなかったのか?」
「なんのことですか?」
生徒会?いや、生徒会については知っている。あの恋先輩がいて、会長がいて、それで……
「てっきり君はあの成都海先輩に与えられた側の人間だと思っていたよ。だから、ああもすんなりと生徒会に入ることができたのだと。では君は、あの四年生の先輩から何ももらっていないのか?」
「もらうだとか、与えるだとか、よくわかりませんけど。俺はあの先輩から何ももらっていませんよ」
なんだか、よく名前を聞くな、あの先輩。先生も生徒会も気にかけている。やはり只者ではないのだろう。
目の前で、先輩は何やらぶつぶつと思考をまとめているようだった。そして意を結したように、そして、とても穏やかな顔で、
「では、今日は、というか、金輪際僕と関わらないでくれ」
にこやかな顔で、そして少量の劇薬を混ぜたような顔で、先輩は言った。
俺はその顔をみて、何か、思惑のようなものを感じ取った。