身近な人に似ていると言われた時の気まずさ
帰り道。
俺と藍子は二人で帰路についていた。
ほとんど嵩が減ったペットボトルを弄びながら、他愛のない話しをした。意外と杠葉先輩は私に心を開いてくれたとか、あんなにかわいい子と近づけたのは今日の一番の収穫だとか、そんなことを。
「それで、あの先生と何を話してたの?」
と、藍子はそんなことを突然に言った。脈絡がない発言だったから、俺は一瞬戸惑ったが、藍子の事だ。別段珍しいということでもない。こいつはそう言う奴だ。
「なんだ、楽しそうにしていたのに、こっち見てたのか。てっきり遊びに夢中かとおもってたぜ」
「…別に、気にしてたわけじゃないわよ。ただ…」
「ただ?」
「いや、何でもないわ。で、何を話してたの?」
なんだか歯切れの悪い藍子だなと思う。いつもはズバズバと人切ナイフみたいに発言をする彼女だから、余計に変に思う。
「別に、ただ他愛のない話を、だよ」
彼女の歯切れの悪さが移ったのだろうか、俺も漫然とした返答になってしまった。
「でも、先生と話した後、何かを考えているみたいだったけど?」
「そうか?」
まあ、確かに、疑問は残っていた。先生が言った、俺と成都海先輩に共通点があるという発言に対する疑問が。そうだ、一瞬とはいえあの元生徒会長だった成都海先輩とあっている藍子なら、彼女の真意がわかるかもしれない。
「――あの先生に、『成都海』先輩と俺が似ているっていう風に言われたんだが、何か思うところはあるか?俺はそんなこと全くないと思うんだが……」
と、俺が言うと、藍子は驚いたように目を見開いた。
「――私、あの理科室に行ったとき、一つだけ、思ったの」
「それは、なんとなく似ているとか、雰囲気が似ているとか?」
俺には全くと言っていいほどに自覚はないが、先生が言っていたことだ。もしかしたら藍子もそう思っているんかもしれないと聞いてみるが、彼女は首を振った。
「そうじゃなくて……」
一瞬の事なんだけれど、しかも、あんな女口調の先輩で、しかもあんなに髪も長くて、変だとは思うんだけれど。と彼女は続ける。
「あの、成都海っていう先輩、顔が洸祐にそっくりだと思ったのよ」
と、全くの予想外なことを藍子は言った。
なんだって?