シャツインするのは幼稚園まで
閑話休題のようなギャグパートをお見舞いしてしまったことは大目に見てもらうことにして。
そして、俺は昼休み後の午後の授業は体操着で出席することを許可してもらった。さすがに主婦の先生だ。俺のシャツについているカレーのシミをした瞬間に、失神してしまいそうになるほどに驚愕していた。「大丈夫!?」と。
体育教官室に備え付けられた、ビブスを洗う用の洗濯機に俺のシャツは放り込まれることになった。先生の対応も素晴らしいもので、俺の知る限りの染み抜きの方法をすべて網羅した完璧な染み抜き作業だったといわざるを得ない。再度言おう。主婦すげえ。
だがこんな時代、これくらいの事は主婦だとかいっていないで、男の俺もできなければならないような気がする。昨今は人間としての価値を求められている気がしてかなわん。俺には何の価値もないってのに。
「で、そんな変な格好ってわけか」
「はい。スラックスは汚れていないので」
「でもシャツを中に入れる必要はないんじゃないのか……?」
杠葉先輩の怪訝な目が痛い。確かに。シャツは入れなくてよかったかもしれないな。さすがに先輩。俺達よりも二年早く生まれただけで、こんなにも含蓄のある言葉を吐くことが出きるとは……関心関心。
「え、ワシこいつと出会ってから会話したの数回とかだよね?なんでこいつはやけに慣れているわけ…?」
「洸祐さんは誰にでも分け隔てなく接する方なんですよ。恋さん」
「こいつも距離感おかしいの!」
―――うーん。こんなにもキャンキャンと怒っているのに全然怖くないのは何故なのか。何なら口調はおじいちゃんもびっくりな古典的なおじいちゃん口調だしな。お前は老賢人なのか?
「いった!こいつワシの事老人っていった!」
「賢を忘れてますよ、恋」
「だから距離感!」
俺とレイ、そして杠葉先輩はおなじみ?の『総理大臣部』の部室に集まっていた。粗茶ですが。といって出てきたのは色とりどりのパックに入った紅茶だった。ロンネフェルトなんて書いてある。
「え、これ結構高い奴じゃないのか?」
「……?粗茶と言えばこれじゃないですか?」
―――うーん。生きてきた文化圏が違うという気さえするな。方や総理大臣の孫、方や一般家庭の長男だもんな。資本主義社会の闇を感じるぜ。
「ところで先輩。要件ってなんですか?」
やっと、本題。お待たせしてしまって申し訳ない。俺も少し楽しみすぎたという気はしている。
「うむ。その件なんじゃが―――端的に言おう。おぬし、つい先日『副生徒会長』にあのこの学校始まって以来の問題児、成都海生徒会長に抜擢されたんじゃろ?うむうむ。その辺の事のあらましは知っているつもりじゃ。なんてたって、ワシは学年―――」
「先輩、もうふざけるパートは過ぎましたよ」
「……うむ。で、現行の生徒会にもその話は伝わっており、正式に加入の資料を作っている最中なんじゃが……どうにもな。言うなれば裏口入学、もとい裏口入会したお前さんのことを、好ましくお乗っていないような奴がいるようなんじゃよな……」
ほれ、これをみよ。
と言って俺とレイの前に差し出されたのは一枚の紙、というかA3ポスター用紙だった。
そこには大きく、
「果たし状」
と書いてあった。