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少女ネイビーとシャングリラ  作者: オカダ倭
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レイ×洸祐?

「洸祐さん。副生徒会長になっちゃったんですか。これはまた難儀な。と言っても僕は立ち会っているのでそれくらいの心構えはできてますけれどね……。さぞかし藍子さんはわめいたことでしょう」

あの成都海先輩との一件から数日後。

言っておくと、藍子はただ睡眠導入剤を盛られたというだけで、命に別状はなかった。だが、大事を取ってここ数日は病院での検査やら、療養やらで学校には来れていなかった。

彼女の親御さんから話を聞けば、「今すぐにでも学校に飛び立っていきそうな元気だよ」と、どこかやつれた声をしていた。元気があっても、学校に行きたがる生徒というのはとても珍しいような気もするのだが。あれはあれでとても変な人間だからな。仕方がない。

よく言われる通説として、「蛙の子は蛙」というものがあるが、彼女はその原則には当てはまっていないようだった。どちらかと言えば、彼女の父親や母親は穏便にことを済まそうとする常識人という感じである。間違っても、高校生にもなって地団太を踏むような節操のなさは持ち合わせていないだろう。

その点、彼女には「鳶が鷹を産む」という通説が当てはまりそうなものである。藍子が優劣のどちらなのかということを指しおいても、「鷹が鳶を産む」という方が正しいような気もするが。

そんな彼女のパーソナリティをほんの数か月で把握しているこの袖ケ浦レイという男。

だてに、彼女の追っかけというわけではなさそうだ。もうこいつがあいつの幼馴染でいいんじゃないだろうか。

「なっちゃったんだよなあ。一年生で生徒会に入るなんてことはほとんどないってのに。今回は元生徒会長の権限を行使して、俺を無理やり欠番だった『副生徒会長』に抜擢したってわけらしい。」

ご都合主義ここに極まれりと思うのは俺だけだろうか。

ああ。そういえば俺は「生徒会に権限があることなんて夢物語だ」みたいなことを言っていた時期があったっけ。

この学校は例外ということらしかった。きちんと生徒会には特権が認められ、人事権は民主主義的に生徒の総意に基づくものではなく、あくまで現行の生徒会に権利があるのだという。

知らなかった。というか勘違いをしていた。

中学校までの意識で俺も藍子も話していた。「推薦人が演説をして、対抗馬がいればその人との決選投票になる」なんて思い込みをしながら。

仕方がない。だって俺も藍子も中学までは地元の公立学校に通っていたのだから。――私立学校の様式になれていないのだ。ここは私立学校だとしても異質なところだと思うが。

「そうですね。確かにこの学校は変なところが多いですよね。生徒会の制度もしかりですし、部活動、そして学校行事でさえも」

「俺は部活動に入ったことがないからわからないんだが、何か変なところがあるのか?」

「僕もこの学校に来てからは入っていませんが……ってなに天然に現実逃避しているんですか。今僕たちは紫吹藍子さん率いる『総理大臣部』に所属しているじゃありませんか」

「そうだった。そうだった。」

しっかり失念していたゼ。

あいつといるのは何も変わっていないからな。忘れるのも仕方がない。

「でも僕のことを忘れるのは少しひどいのでは……?僕は藍子さんを認め、そして愛しているのと同じくらい洸祐さんのことを……」

「うん。わかったから。キャラがぶれるから。お前はそのまま藍子ストレートでいてくれ。腐った人たちが喜んでしまうから……」

「? 例えばレ洸本とかが出てしまうとかでしょうか?うっすい。」

「うん。わかったから……もうやめてくれ……」

なんで男同士で薄い本の話をしなきゃならないのか。しかも腐っている人向けの。

というかレイ。まじめな顔してそういうことはきちんと知っているのな。

「おじいちゃんが好きでしたから。よく「801代総理大臣になれなかったのが今生のたった一つの悔いだ」って言ってましたよ。僕は何を言っているのかまるでわかりませんでしたが。」

まさかの総理大臣はBL好き!

衝撃の事実!

知りたくなかった!

この国ももう破滅の一途をたどっているということなのか?

これをわかってしまえる僕も相当だと思うのだが。それは目をつぶっていてほしい。この話は逆801になってほしいものだ。きちんと区切りはつけていきたい。

「まあまあ。この話は今後しっかりとしていくとして……。これからどうするんですか?もう生徒会副会長になる公示も済ませたことですし、本格的に仕事が始まるころ合いでしょう」

あんな話をした後によくそんなに整った顔ができるものだ。

「とりあえずは、あらゆる資料に自分の名前を入れていく作業が中心になって来るかもな。生徒会だよりとか、学校新聞とか、新入生用の資料に乗せる写真を撮ったりな。」

「では本格的な仕事というのはまだしないという感じですか」

「多分そういうことだと思う。杠葉先輩が言っていた限りでは。」

杠葉先輩。下の名前は確か恋。三年生とは思えないほどの体躯の小ささで、先日藍子に拉致されて部室に連れて来られた生徒会会計である。

正式に直属の先輩となったわけだが。俺の方が役職としては上であるのだから、少し距離間に困っているところではある。

「ああ。この小柄なかわいらしい先輩ですか。」

「………」

この?

なんだよレイ君。指示語の使い方くらい……と思ったのだが。

「誰との距離間に困っているって………?」

下を見下げる形で目線を下げると、杠葉恋先輩が腕組して俺とレイの間に割って入っていた。

うーん!小さい!

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