俺の未来なら別に
「え……?藍子は目を覚まさない…?」
得意げにそういった先輩。ここぞとばかりにカードを切ってくる、さながら稀代のギャンブラーのようだった。いや、まるで、いけ好かない探偵のような、そんな風体を醸し出していた。
こういったいけ好かない、気障なところがあるから、先輩とレイは馬が合わないのかもしれない。
いや、そんなことよりも。
「まるで原因は自分が知っている。そんな言い方ですね。生徒会長」
こちら側のいけ好かない代表、袖ケ浦レイは同族とも呼べる先輩にかみついていく。
「ああ。君とは話していないのだから、かみついてこないでほしい。本当に、切実に。君みたいな八方美人の権化のような人物には意見なんて求めていないよ。――もとより意見なんて持ち合わせていないってのが本当だろうけれどね。………私は、この『幼馴染が目を覚まさないとたった今聞かされた』君に聞いているんだ。降谷洸祐君」
先輩は得意げさが持続していた。先程までのニヒルさはどこへ行ったのか、今は胸を張って、堂々と問答をしようという気が満々である。――さながら刑事ドラマの犯人役cパートのようだった。口数が多くなった。
「洸祐君。取引をしようじゃないか。取引。」
もう、午後の授業はとっくに始まっている。今頃先生は無遅刻無欠席の生徒二人が脱走したということで頭を抱えているころ合いだろうか。
この学校は、生徒数がそこらの公立学校の数倍はあるという所謂マンモス校というやつだから、一人や二人、いなくなったところで、さしたる変化はないはずなのだが。――これはあくまで生徒側の意見なのであって教師側の視点に立ってみればきっとそんなことはない。
とにかく、早く決着をつけることが必要になってきそうだ。
手の空いた先生を使って俺達を探しに来ることもあるだろうから。
「わかりましたよ。先輩。俺と取引をしましょう。俺が持っているモノ、そして、俺が今後生み出せるだろうものならば俺はこちらのカードとして切ることができます。」
例えば、将来有望とは言えない自分の将来だとか、お金だって今後三年間をバイトすることに費やせば200万程度ならば払えるだろう。
だが、これまでの話の流れからすれば、先輩が何を求めているのかは明らかだった。
俺の将来というのはやや的はずれにしても。
将に来たらんとす。
「そんなあやふやなモノなんて私には何ら必要ないよ。私が欲しいのは、君の学校生活。――君は私の生徒会の副生徒会長として、尽力してもらいたい。」