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少女ネイビーとシャングリラ  作者: オカダ倭
120/124

変わらない笑顔。変わらないモノ。

レイと俺と恋先輩は、三人で荒廃した街を散策していた。

とりあえず、こうした人間がいない町で怖いのは突然の襲撃だ。だから俺たちは適当な武器を持つことにした。俺はナイフ。レイは長い棒にナイフを括り付けた簡易長刀。そして恋先輩は大きな家にあった日本刀だった。一番殺傷能力が高いものを一番非力なメンバーが持つのは当然だということになってこういうラインナップになった。

「これで夢でした、ってなれば一番いいんですけどね」

なんてのんきなことを言った瞬間、星が降ってくる。山は火事で赤く燃えている。俺たちは、下手に声を発せないことを知った。

「とりあえず、これを読んでくれ」

といって俺は恋先輩とレイに『薄群青の手紙』を差し出す。あの成都海先輩の友人であるところのケンジさんが書いた手紙だ。ケンジさんは、今この瞬間、生きているのだろうか。

そしてこの場合、生きているとはどういうことだろうか。がれきでいっぱいになった大通りを俺たちは歩く。

とりあえず、俺たちの目的地は、俺たちの母校。

すべてを共有して、立ち向かうために、あの『マル秘』と書かれたノートが必要なのだ。


学校へと入る。門は閉ざされているので、塀を上るしかない。俺とレイはいいが、恋先輩は一苦労だった。俺も手伝うことになったが、「どこさわっとるんじゃ」なんて言うもんだから、レイにもすごい目でにらまれた。

下駄箱は意味をなさず、ドミノ倒しの要領で、下駄箱たちは倒れていた。がれきを踏み分け、階段へと向かう。

中央階段は崩れていた。だからこうして西階段のほうを使わなければならない。そして図書室横の渡り廊下を抜けて、特別棟に向かわなければならない。

目的地は、俺とレイとあの四年生、成都海先輩と出会った場所―――理科実験室だ。

きっと、あそこに秘密がある……とレイが言っていた。

理科実験室はやけにきれいだった。というのも、薬品が入れられている棚は鍵がかかっていて、中身は散乱していたが、床に散らばるなんてことはなかった。ただ、棚を止めている金具が壊れかかっていたが。危ない。

レイはそんな危険な棚の近くには恋先輩を近づけないようにしていた。こういうところが、かっこいいんだよな、こいつは。

「きっとこの辺にあるはずです」

教卓部分の大きい机。その一番左下の引き出しをレイは開く。

「ありました『マル秘』」

ジップロックに入れられて、防湿加工がされていた。これを後世に残すという製作者の意図がうかがえる。

だが、うまくいきすぎているように思えた。

きっと藍子は俺たちを見ている。

だから、ああやって山を燃やしている。星を降らしている。

だから怖かった。こうして真実にたどり着いていくことが。


そしてそんな危惧を裏打ちするかのように、俺たちの背後から声が聞こえた。

「僕は記憶がいいほうなんだけど、君たち、誰だっけ? 顔は覚えているんだけどね」

生徒会長。今はこうして大人になっているわけだから、元生徒会長というほうが正しい。といっても元生徒会長なんていうと、あの成都海先輩みたいになりかねないから、「生徒会長」と呼ばしてもらうが。

「川越……」

口を開いたのは恋先輩。

そう、目の前には、俺たちが一年生だったころの生徒会長、鶴ヶ島川越先輩がいた。

「恋。久しぶりだね」

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