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少女ネイビーとシャングリラ  作者: オカダ倭
114/124

嬉しいのか、わからない

「病めるときも、健やかなるときも」

たどたどしい日本語で牧師が言う。

目の前にはレイと恋先輩がいる。結構な身長差がある二人だ。どうやって誓いのキスをするのかと思ったが、レイは恋先輩を抱き上げて、大胆なキスをした。――その手があったか。

隣にいるしずくは「いいぞー」なんて言って楽しそうにしていた。恥ずかしいので、やめてください。

周りには、河合とか、ほかにも高校三年間で培った友人が多くいた。俺の友人だったやつもいれば、レイの職場の関係者だろうか。俺とは全く関係のなさそうな人もいた。

そうして、見まわしたとき、見たことのある人物が紛れ込んでいたように思えたけれど、実際はどうなのかはわからない。


二次会。というか、ほとんど同窓会になった状態の結婚式。近所の居酒屋で開かれていた。ここは河合の店らしい。親が持っていた土地をうまく使ったといっていた。

「二人の結婚に、カンパーイ!!!!」

「カンパーイ!!!」

ここにいるのは俺たちと同じ高校にいた人なはずだ。だが、ちらほら知らない顔も混じっていた。きっと変わりすぎた人とかもいるのだろう。後は俺が知らない人。

「にしても、降谷がしずく先輩と付き合ってるなんてな~。もう長いんだろ? 次はこいつらか~?」

ヒューヒューと皆はやし立てる。もうみんな仕上がりつつあって、なんでも楽しいこ頃合いだろう。

「それは、まだわからないんじゃない~??」

しずくも久しぶりの酒に浮かれているみたいで、俺の肩を抱きよせながら、そんな信ぴょう性のないことを言っていた。こいつ、酒癖悪いんだよな……。

「私は~いつでもいいっていってんのに~。コウ君が~」

「おい。ちょっとこいつに水!」

俺が「しずく」と呼び掛けても、よくわかってないみたいだった。こいつ、大丈夫か?

とりあえず水を飲ませて、寝かしておいた。「コウ君が~」の後に続く言葉を言われてたら、俺が何を言われるかたまったもんじゃ……。

「そうかー降谷が渋ってんのか~そうかそうか」

河合が大きな声で言うもんだから、みんな俺のほうを見る。

恋先輩がこれ見よがしに、口をはさむ。

「子供のこともあるしのう……早くものにするんじゃぞ。洸祐」

「……はい」

くそ。やっぱりこうなった。レイは酔わないらしく。ただにこやかに俺のほうを見ていた。


外の風にしずくを当たらせたかったし、俺も少し気持ちの悪い酔い方をしてしまったので、しずくを肩に担ぎながら外のベンチに腰掛けた。

店内のほうが暑い。外はひんやりとしていて気持ちがよかった。

夏が来つつある。

「隣、いいですか」

といって、しずくのほうではなく、俺のほうを選ぶというのは、レイの気障な部分が出ていると思える。こいつは、何か変わったのだろうか。何も変わっていないように見えるが。

「藍子さん。すごいですね。多分、総理大臣になるのなんてもっと先なんでしょうけれど。もう十分すごいですよね」

「ああ。本当にすごい。」

「洸祐さんは、あまりうれしくなさそうですけど」

「そうか? いや、そうかもな。」

「どうしてですか?」

「どうしてって、そりゃあ……」

そりゃあ。

そりゃあ。

そりゃあ。――なんだろうな。

「じゃあ、洸祐さんが言わないなら、僕が言います。洸祐さんに言ってなかった藍子さんのこと」

レイは、そして、あの夏のことを話しはじめる。

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