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少女ネイビーとシャングリラ  作者: オカダ倭
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熱に浮かされて

それから、藍子と俺は、文化祭を回った。

他愛のない会話とともに。「レイと仲直りできたの?」という藍子の言葉に俺は即答はできなかったけれど、しっかりとした口調で「もちろん」とは答えることができた。

まあ、どうせ明日回ることになるから、今日のところはこのくらいにしておこう。と言って俺たちは結局自分たちのお化け屋敷に戻っていた。意外と部品が破損したりとかして、修復作業に手間取っていそうだったので、これもまたよかった。

シフトに加わり、いろいろな雑務も終わり、文化祭一日目が終わった。ここで話すのもなんだが、この一日目はどちらかというとリハーサルに近いものだ。一般の客は来ず、生徒だけで楽しむといったものだ。一日目を踏まえて、シフトの調整をしたり、飲食のクラスは追加で発注したりする。追加発注が難しそうならば、放課後に買いあさることになる。

そうして、最後の仕上げをして、明日の一般公開に持っていくのだ。

俺たちのクラスも、シフト調整が必要だということで、藍子がパソコンをカタカタとしていた。

時刻は六時。もろもろの準備も終わり、今日は解散。というところで藍子が言葉を求められていた。

明日への意気込み、的な。

「えーそうね。こうして、今日ブラッシュアップしたことで、より最高なものに仕上がったと思うわ。ありがとう。みんなのおかげよ。」

教室を大きく区切る役割を担った壁担当の河合は鼻に人差し指をやって、照れくさそうにしている。その照れ方はわんぱく小僧しかやらないのよ。

「とにかく。明日は楽しむこと! これが最後の文化祭実行委員としての命令よ!」

うおおおお、とクラスは盛り上がっている。

エアコンが完全に効いていない、少し汗ばむくらいの校内。いくらか明日への熱気で熱くなった気がする。

楽しむことが仕事。

心も軽くなったことだし、明日は久しぶりに楽しく過ごせそうだと思った。


***


帰り道。

もう、無数に重ねてきたこの帰り道。

今更ながらに説明しておくと、俺と藍子は電車を使うことがないので電車通学のレイや恋先輩とは出る門が違う。俺と藍子は西門から出るが、レイと恋先輩は正門から出るらしい。ほとんど使ったことがないのでよくわからない。

そして噂によると、最近、レイと恋先輩が一緒に帰っているそうだ。

まあ、レイのことだし、悪い俺が勘ぐるようなことはないと思うのだが、少し意外な取り合わせだと思う。

「そうかしら。私はそうは思わないけれど」

「そうなのか」

「そうね。だってレイと恋って兄弟みたいじゃない。名前が」

「そんな理由で?」

「そんな理由。友達なんてそんなもんでしょ」

藍子の言っていることはわからなかったが、よくわからないうちになっているのが友達?というような意見には少しばかり納得できる部分があるかもしれない。

「明日、何もないといいわね」

「それ、言わなきゃ明日何もなかったのに」

「フラグっていうんだっけ?私そういうのあまり知らないから」

「そう、合ってるよ。」

「よかった。………まあ、言ったとしても言わなかったとしても、何もないなんてことはないと思うけれどね」

「なんか予知者みたいなこと言うんだな」

「確かにね。でもどちらかといえば実行犯ってところかな」

「じゃあ、ここで悪の火種は根絶やしにしなきゃな」

「そうね。止められるものなら止めてみなさい」

なーんて話しているうちに、あっという間に家についてしまう。暑い夏の日、寒い冬の日、早く家につきたいといって自転車で帰りたくなるけれど、こうして自転車を転がしながら帰るのも悪くないと思える。藍子と一緒なら。

ありふれた言葉。

この時間がずっと続けばいいのに。

なんて歯が浮くようなセリフを言ってみたくなったのは、きっと夏の暑さと祭りの熱のせいだと思う。

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