慮る
ひりひりと痛む頬を感じながら、炎天下の中、一人で屋上にたたずんでいた。
すると、藍子が入ってきた。
「やっぱり、こっぴどくやられたみたいね」
「………」
「痛かった?」
「別に」
「そう」
藍子は俺の隣に座ろうとする。俺はそれがなんとなくずるい気がして、そっと距離をとった。
「どうして、あんな言い方しかできないの?」
「それはあれが俺の本心だからだ」
藍子は聞いていたんだろう。まあ、この屋上の下の教室にでもいれば、あんな大声聞こえるだろう。
「本心ねえ。私が好きになった人はそんな酷い人だったのか。それは少し心外ね」
「ごめんな。俺、今日はもう帰るから。後は頼んだ」
藍子が俺に話しかけてくるのも、隣にいるのも嫌で嫌で仕方がなかった。このまま消えてしまいたいと、本気で思える程に。
それでも藍子は俺を離してはくれないみたいだった。手をつかんで、引き留める。
「自分が悪者になれば、いいと思ってるんじゃないの?」
ズキリと胸が痛んだ。という痛みも俺は飲み込む。そんな痛み知らない。という風に。
「ずっとそうだった。いつからかはわからない。けれど、そうやって自分を下にしか見れなくなってるんでしょ?だからそうやって自分を蔑ろにできる。他人は尊いものだということだけが先行して」
知らない。どうでもいい。俺は友人を蔑ろにしてまで、藍子の隣には居たいとは思えない。なんて言葉も俺は知らない。
「私は、それでもいいわよ。洸祐がいいなら。でも、私はレイとも、恋先輩とも、友達で居たい。もし二人に何かあったら、私は洸祐を許さない」
藍子はまっすぐとした目で俺を見つめているみたいだった。俺は藍子の目なんて見れるはずがない。
「私が、担任には言っておくから、好きにしなさい。私は、もう関われないから」
そういって藍子も、屋上のドアから帰って行ってしまった。
このまま、眠りについてしまいたい気分だった。