メッセージ
昼休みが終わり、食堂をレイと後にした。
「僕は洸祐さんのことをさん付けで呼びますが、僕の事はどうか『レイ』と呼び捨てにしていただいて構いませんよ。この名前、僕は気に入ってるんです」
「へえ。じゃあ、俺の事も洸祐って呼び捨てにしてくれ。そうじゃなきゃ気持ちが悪い」
「……あまり人を呼び捨てにする事に慣れていませんが、善処します」
「おう」
なんてやり取りがあったが、取るに足らない普通の会話だろうから別に語る必要はなさそうだ。
ただ単にお互いの呼び方を統一しよう。とそれだけのことだ。
なんだかこんなやり取りは、初めて会ったときにするようなものだから、なまじそこそこの時間を一緒に過ごしてきている奴とこんなやり取りをするのは不毛にすら思えた。
だが、きっと、今日は初めて会ったようなものだろう。
上っ面の切っ先だけで話し合っていた俺とレイが、そこそこのつばぜり合いをしたのだから。
何を争って。なんてのは言うまでもないだろう。
俺からは絶対に言わないが。
教室に戻る途中、俺の携帯がぶるると振動した。
一応教室内でなければ使ってはいけないというルールになっている携帯だが、確認くらいならば、と俺はその画面を見る。
するとそこにはメッセージが2件入っていた。
一つは取るに足らないメッセージ。妹から、『プリン買ってきて』というものだった。あの生意気な俺の半分くらいの年齢の妹は、もう人を使うという技術を体得しつつあるようだった。どっかの幼馴染にも教えてやりたいぜ。
……と、ふざけた思考をこねくり回せていたのもつかの間。
その2件目のメッセージに連なるように3件目のメッセージがやってきた。
差出人は『藍子』
そこには短い文章が2つ。
『せいとかい』
『たすけて』