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僕は鬼になろう。

 つい、足が震えた。嬉しいというより驚きの方が強かった。宮廷と公爵邸で会ったシェリーは別人だったのだ。


 僕は七年間も騙されていたのか……?


 ずっとポピーが影武者であってほしいと願い、それが叶ったのに段々と腹ただしい思いに駆り立てられていく。


「バトラー、策とは何だ!?」


 感情的になり少し乱暴な物言いになった。


「王子様が()になるご覚悟があるなら教えましょう」


「鬼……?」


「したたかな鬼でございます」


「言ってる意味が分からないな。平民になってでもポピーと一緒になる覚悟を求めているのか、それとも皇族のままポピーと結ばれる為の()()()()()()()覚悟を言ってるのか……?」


「後者です。あくまでも皇族ファーストが私の基本でして、その為なら鬼にでもなります。事を強引に進めるならそれなりのリスクがあるのです。さて、鬼になるお覚悟はございましょうか?」


 それは多分「誰かを欺き傷つける」覚悟だろう。それが誰なのか、いや、誰であろうと進める覚悟を問われている。


 シェリーを我が妻として迎えるのは正直辛い。それがポピーならどれだけ嬉しい事だろうか。それが叶うのなら……。だが、迷いはある。……が、


「僕は()()()()()。バトラー、教えてくれ。その()とやらを」



 ***



「エリオット王子様、側近にして頂きありがとうございます」


「早速だがミーア、君には過酷な任務を命じざるをえない」


「バトラー様よりお聞き致しております。全然大丈夫ですわ。それに、まさか私の様な者が貴族院へ通えるとは夢にも思っていませんでしたので頑張ります!」


 僕はバトラーから()を授かっていた。その為に先ず、ミーアを皇室推薦で強引に編入させる事に成功した。彼女の任務は簡単だが辛い内容だ。僕のファンを装いまとわりつく事でシェリーやその取り巻きから睨まれ、酷いいじめを受けると言う役だった。シェリーの不道徳を誘う任務なのだ。


「王子様、シェリー一派が誘いに乗り出しました」


 僕の周りはいつも取り巻きが囲っている。それにミーアも加わって後ろを歩く様になった。すると異変が直ぐに起こる。シェリーの取り巻きが彼女を睨んで威圧してくるのだ。


「王子様、今日は女生徒の半数から睨まれました。残りの女生徒も私には、よそよそしい素振りでございます。シェリーは貴族院でかなりの権力を持っていますね」


「それだけでは済むまい。覚悟しといてくれ」


「はい。()()()()()を演じて見せます!」


 それから虐めはエスカレートしていく。


「王子様、今日は無視の刑です。うふふ」


 彼女は楽しんでる様だ。余裕なのか? だが、そろそろ実力行使が始まるだろう。


 それから数日後の事だ。放課後、ずぶ濡れで生徒会室へ入って来たミーアを見て、僕はシェリー一派に怒りを覚えた。


「だ、大丈夫か、ミーア!?」


「はい。あ、王子様、今日は二つの手柄がございます」


 ミーアは持参していたのかタオルで濡れた髪を拭きながら、呆気からんと報告してくる。


「何だ?」


「シェリーはお酒飲んでますね。秘密のお部屋を捜索すれば証拠を押さえられますが……?」


「うむ、その噂は聞いた事がある。で、あと一つは?」


「ポピー様が密かに接触してきました」


「何だとっ!?」


 この謀略は単にシェリーの不道徳を暴くだけではなかった。それは序盤に過ぎない。本当の肝は「ポピーを味方にする事」なのだ。


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