表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

29/61

ど、どうなってんだ……?

「お母様、僕はもう我慢出来ません。シェリーと婚約破棄させて下さい」


「まあ、エリオットったら一体どうしたの!?」


 宮廷の敷地内に聳え立つ大きなお城の一室で、僕は母に思いをぶつけた。これまでの出来事とともに、どうしても好きになれない婚約者を罵ったのだ。


「そんな風には見えなかったけどね……。でも婚約破棄は出来ませんよ。貴方も分かってるでしょう?」


「でも、すっごく嫌なんだよ! もう会いたくない!」


「あのね、結婚だってまだ先のお話、お互いまだ子供なんだから、性急すぎる結論はよくありません。それに、彼女もこれから公爵家でしっかりと教育受けて、いずれ立派な淑女になると思いますよ」


 どうやら母は子供の戯言だと思ってる様だ。だが僕は必死で食い下がる。


「お母様、婚約破棄が難しい事くらい分かってます。でも()()()()()()()()なんです。……あ、そうだ。彼女とじっくり会って貰えませんか? そうすれば僕の言ってる事が理解出来るから!」


「そうねえ。では宮廷へお招きしましょう」


 よしっ……と。実際のシェリーと接すれば、もしかしたらお考えが変わるかもしれない。どう教育したってアレが()()だなんて無理に決まってるよ。そうそう、彼女とダンスするのも良いな。訳の分かんないスピンを披露させて母を幻滅させてやろう!


 僕は早速バトラーに準備を進めさせた。



 ***



「ご機嫌ようでございます。本日は御招き頂きありがとうございます」


 シェリーが付き人を伴い、宮廷に訪れたのは一月後の事だった。


 準備は整っている。予定はこうだ。先ず母を交えて紅茶でも頂きながら軽く歓談する。その時点でボロが出るだろうな。でもまだまだこれからだ。次にダンスを踊る。これを拝見すれば、とんでもない令嬢だと確信するに違いない。さらにだ、美しい庭園をお散歩しよう。まさか母の前でカエルを捕まえるなんてしないだろうけど、もしやったらそれは決定打になる。母もカエルが大の苦手なんだ。


 ……いや、あの日のトラウマが蘇るからそれだけは勘弁かな。


 いずれにせよだ、長く一緒にいれば、きっとヘンなお嬢様だと結論付けられるだろう。お父様(陛下)にも進言してくれるかもしれない。


「ふふふ……」


 これから起るであろう出来事を想像すると自然に笑顔になった。


「あら、エリオット。シェリーと会って嬉しそうだこと」


 いえいえ、お母様。違う意味で嬉しいんだよ。


 やがて僕たちはプライベートダイニングルームで、皇室に献上された最高級のお紅茶を頂いて歓談に花を咲かせた。ボロが出るのは時間の問題だった。


 だがーー。


 その日のシェリーは何かが違っていた。僕の見てきた彼女ではない。礼儀正しく気品に溢れている。まるで別人の様な振る舞いだった。


「とても美味しいお紅茶ですわ。ベルガモットの爽やかな香りがします。わたくし、このお味が大好きでございます」


「まあ、シェリー。そう言って貰えたら嬉しいですわ。オホホホホ」


 ど、どうなってんだ……? 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ