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馬鹿女ぁ、ざまぁぁぁぁぁよ!!

 御主人様が馬鹿女を手招きして呼んだ。でも離れた場所に居たアイツは詳細な状況が掴めず、さしずめ王子様が()()()されたと勘違いしていた様だ。そして、勝利の美酒を所望されたと思いドリンクを手に取りホールへ向かって来る。心なしか酔って足元がふらついていた。それをエミリーが気づいて彼女の後を追う。


「おい、ワインなど要らん!」


「あら、どうなされましたか、御主人様?」


「何が御主人様だ! お前は誰だ!?」


「えっ!? わ、わたくしは……ポピーですけど」


 馬鹿女は直感的に「マズい」と思ったのか、わたくしに助けを求める視線を向けた。


 ふん! 知らんし。アンタ、もう()()()ですから。お・し・ま・い……よっ!


「正直に言いなさい。シェリーなんだな?」


「シェリー様はそちらにおいでですが?」


 この後に及んでまだシラを切る気? バレてるっての! 


 御主人様がシェリーのお顔に近づいて呟かれた。


「しかし、よく似てるな。全く見分けがつかない……と言うかお前、酒飲んでるな!? ポピーは給仕中に酒を飲む事など絶対せんわ!」


「あ、あの、これは……味見と申しますか……」


 いつまでもシラを切る馬鹿女にジャック様が引導を渡した。


「シェリー、もう観念しなさい。お前のやってる事は犯罪だ。王子様に、お父上様に、ポピーに、そしてここに居る皆さんの前でお詫びするんだ」


「えっ!? な、何で……」


「この馬鹿モノーーッ!」


 バチンッと御主人様が平手打ちをした。


「うう……」


「お前と言うヤツは! お前と言うヤツはっ!」


 何度も何度も御主人様が馬鹿女を叩いた。それをジャック様がお止めになる。


「もういいでしょう。さあ、シェリー、詫びるんだ!」


 ぶたれて倒れ込んだアイツは、最早言い逃れが出来ないと悟った様だ。鼻血を垂らした悲痛な表情と共にカラダが震えている。そして上目遣いでわたくしを見た。


 よし、言ってやる。


「シェリー様、わたくしは公爵家に売られた身です。でも、ただの使用人とは違った。貴女に似てるからって、これまで散々影武者を演じさせられました。全て貴女の命です。とは言え、わたくしも同罪……貴女と共に如何なる処分もお受け致します。但し、その前に謝ってください」


「ポ……ピー……」


「あやまれーーーーーーーーっ!」


「ヒィ! ご、ごめんなさ…い!」


 こぉのお、馬鹿女ぁ、()()()()()()()()!!


「皆さんにも詫びるんだ。シェリー」


「は、はい。王子様、お父様、そしてここに居る皆様……ごめんなさい。わたくしが悪うございました。ごめんなさい……許してください」


「シェリー様、ミーア様にもよ!」


「はい」


 王子様の側に居たミーア様に向かって、馬鹿女は土下座した。わたくしも同罪だ。だから一緒に土下座をする。


「ミーア様、ごめんなさい!」


 そして今度は御主人様も王子様に土下座をした。


「王子様、申し訳ありませんでした。わたくしの目は節穴でした。如何なる処分もお受け致す所存でございます。本当に申し訳ありません!」


「分かった。シュルケン公爵、では僕からの提案を受けて頂こう」


「ははっ、……して、その提案とは?」


 王子様はわたくしを見つめ、こう仰いました。


「シェリーの貴族院卒業を取り消してポピーの卒業を認める。それ以外の罪は問わないでおこう。あ、それから近々ポピーの身柄を引き取りたい」


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