話し合えばいいんじゃね?
「えーと、話を整理させて下さいね。問題は二つ有ると思います。先ずは貴族院でお酒を飲んでる事実、これは重大な院則違反です。この件についてどう弁明なさるのですか?」
「ん? そんな院則があるなんて知らんし」
「い、いえいえ、ご存じないなんて通用しません」
コイツ、なに開き直ってるのよ!?
「ワインなど、わたくしにはとってはお水を飲む様なものでしょう。それに幾ら飲んでも酔わないの。ただ眠くなるだけだしー」
「その……シェリー様の体質のお話ではなく、規則違反を申し上げているのです……」
「あ、そ。……まあそれくらい問題なくてよ」
あのね、何でそんな解釈に至るの? 全く意味不明だわ。理事長のご令嬢だから? だったら理事長がこの件、どう判断するかですね。
「お考えは良く分かりました。では次にミーア様を虐めた件は、どう思っているのですか?」
「だーかーらー、アレは虐めじゃなくて指導よ!」
「トイレで水攻めしたり、下駄箱にカエル入れたり、靴捨てたり、髪切ったり……えーと、あと何だっけ? ま、兎に角それが指導ですか? 単なる虐めですよ!」
「おーっほほほほほほ……虐めだなんてそんなのアンタ、可愛いもんじゃない。でも言われてみれば、確かに指導じゃないわね。……強いて言えば警告よ」
「警告!?」
「そう。わたくしが正室でしょう。それを知っておきながら、王子にベッタリひっついてるから、ちょっといい加減にしなさいよって言う警告。そもそもわたくしに挨拶も無しにあんな振る舞い、許せないわよ」
いえ、それなら王子様も交えてちゃんと話し合えばいいんじゃね? ……と思ったけどコイツに罪悪感が無いのが分かったから、言っても無駄の様ね。
「いずれにせよ、御主人様からお話があったらその旨、お話ください」
「そーねえ……お父様も面倒臭くていちいち王子の言う事、間に受けないじゃないの?」
わたくしは願う。理事長はまともな思考を持つ御方であります様にと。
***
あれから三日経ったけど日常に何ら変化はない。馬鹿女は相変わらずだし、これはどういう事なの? 考えられるのは二つ。一つ目は王子様が理事長にご報告してないケース。そしてもう一つは理事長が面倒臭がってスルーしてるケース。さてどちらですか?
そんな日々を悶々と過ごしてるうちに、リハーサルの時がやって来た。
「ポピー、エミリー、アンタらも会場に来るんでしょ? わたくしの後ろについて来なさい」
「はい。参ります」
そう、わたくし共も卒業パーティーにはお給仕としてコキ使われるみたいで、裏方の打ち合わせもあってリハーサル会場へ行く事になったのだ。
王子様が馬鹿女に対してどんな態度を示すかしら? やっぱり無視ですか? 興味があるわねー。




