最終話 『その後・・・』
狂った猟奇事件・・彼女の犯行が発覚したのは、すべてが終わってから3日後のことだ。
犯行に使用された凶器や手袋、さらには被害者の遺体はすべて現場に残されている。誰もが『犯人はすぐに捕まる』と思っていた。しかし、事件は『迷宮入り』となったのだ・・・・
これほど猟奇的な犯罪を犯した彼女が、なぜ捕まらなかったのか?
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彼女はすべての犯行を終えた後、現場にすべての死体を残した。
普通、殺人を犯したなら、死体が見つからないように隠すべきだろう。しかし、彼女の場合は『いらない死体を現場に残した』ことが功を奏した。
今回の猟奇事件を起こした彼女の望みは2つ。
1つ目は、他人の身体を奪うこと。
2つ目は、父親の追跡から逃れること。
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「ふむ、仏さんは全部で4つか・・死体を見ると、『胴体』がない死体と『両腕』・『両脚』、そして『首から上』がない死体か。これらを合わせると、人の形になる。狂った人体収集家の犯行か?」
「その線が有力ですね。本部もその線で捜査を開始するみたいですよ」
「で、仏さん達の身元は?」
「今のところ、3つの遺体の身元は判別しました。
2人はアイドルを夢見ていた女性。『胴体』がない死体の女性はなにかの研究者の1人娘でした。可哀想に……家族は酷く嘆いてましたよ。
しかし、身分証など身元がわかりそうなものを一切所持していませんからね・・・・もしかしたら最後の遺体の判別はつかないかもしれません」
「首から上が無いとなると、ニュースで顔写真を流せないか・・・・ だが、そのうち行方不明かなんかでリストに挙がるだろ? DNAやら血液型なんかで、鑑識のやつらが判別してくれるさ」
「遺体の身元は気長に待ちましょうか。それよりも犯人逮捕が優先ですから」
「あぁ、その通りだ!」
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彼女が現場にすべての死体を理由。それは、……
『彼女が殺害されたと警察に思わせるため』
警察は犯人が『胴体』さえあれば生きられるアンドロイドとは気づけなかった。
ならば、首から上を取られた女性の身元が判別できない限り、彼女は捕まらないだろう。
当然だが、首から上がない死体の身元が判れば、『成り変わった』彼女が捕まってしまう。だから彼女にとっては、『成り変わった女性』の身元がわからなければそれでよかった。
しかし、もし『成り変わった女性』の身元だけ抹消すれば、警察は『なぜ首から上が無い死体だけ指紋を焼き、身分証を奪ったのか?』と疑うかもしれない。だからこそ彼女は、すべての死体を同じように指紋を焼き、身分証を抹消した。
最後に、警察が自分も被害者と思い込む事も、すべては彼女の計算通り。狂気の犯行が警察の目を曇らせた。
『胴体』がない死体…… それが犯人の身体だとは誰も気付かない。
こうして、彼女は新しい身体を手に入れ、過去の自分を殺すことに成功した。
美しい身体を手に入れ、警察の捜査網から…… そして父親の追跡から…… 彼女は完全に逃れたのだ。
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「おーい、幸子。出掛ける準備はできたか?」
「えぇ、何時でもいいわよ。・・・・ねぇ、あなた・・私って、キレイ?」
「うん。幸子は最高に綺麗だよ。俺は君みたいな人と結婚できて幸せだ! さぁ行こうか。晩御飯はレストランを予約してあるんだ!」
「それは楽しみね・・・・私も今は幸せ・・」
誰にも気づかれることなく・・・・ 彼女は生きていく。
〜終わり〜
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