序章
今時の若い子はこ言うの好きなんだろ?俺もや
「ふあ〜、今日も疲れたー」
俺、社会に出て二年目の大上秀旗は、今日も今日とて会社から帰宅し、自炊した食事と風呂で癒した身体をベッドの上へ放り投げた。容姿はごく普通で、身長も高いとも低いとも言いにくい。唯一変わってるところがあるとすれば右腕の指先から肘の辺り、あと腹部に赤い痣があるだけ。
この家は風呂とトイレ以外が一つの部屋になったマンションのワンルーム。ベッドをソファのように扱い、一人用の円卓でテレビを眺めたりしている。今日はテレビをつけてないが、代わりにバタフライナイフで遊んでいる。高二の頃から始めて早六年、プロ並みに上達した。使っているのはHom DesignのChimera(書くのめんどいから今後からキメラって呼ぶわ。マニアとかガチ勢には申し訳ないけど)。マジで切れるやつだ。
ちょっと手の中で弄ぶ。
「…すぐに飽きちまうんだよなあ」
同じ生活を何年も繰り返しているせいかいつもこうなる。バタフライナイフを卓上に置いて寝る態勢になった。
「さあて、明日も仕事だ。早く休もっと」
目を閉じればすぐに睡魔がやって来て、深い眠りへと誘った。
*
小鳥のさえずりが響き、そよ風が肌を撫でる。柔らかい朝の日差しが眠りを覚まさせた。
「…ぬぁ?」
身体を起こし、大きくあくびをする。
「朝飯ぃ、作らねえと…」
片目を擦り、重い目蓋を上げて周りを見渡すと、俺の中で時間が止まった。周りには一面に広がる緑豊かな森。見た事のない形をした動植物達がわんさかいた。
「あれ?…ここ、俺ん家じゃ…ない?」
いやちょっと待て、確かに俺はベッドの上で安らかな睡眠を取ったはずだ。なんでこんな緑が茂ってる場所にいるんだ?よく見ると寝間着のままだし、なんかポケットにキメラ入ってるし……なんで?ちゃんと机の上に置いたよな?
俺が尻餅をついた状態で混乱していると、不意に後ろから獣の唸る声がした。身体がビクつき、悪寒が走る。
そんな状態でゆっくりと振り返ると、狼のような獣がよだれをマックスに垂らして睨んでいた。歯はサメのように二重に重なっており、爪はノコギリのように鋭く尖っている。額には白と黒のグラデーションの掛かったツノが一つあり、鋭い目は左右に二つずつ存在している。
「○♪€々÷\%〆¥→×$・°>☆〆〒⁉︎」
聞いた事もない悲鳴が口から出た。奴の口からも耳をつん裂く咆哮が上がる。
なんだ、アレ…⁉︎あんなのバケモノじゃねえか‼︎
必死で手足を動かし、森の木々の中に逃げ込んだ。少しは距離を取る事ができたものの、奴は流石狼と思う程のスピードで距離を縮めてくる。
「フッザッけんな‼︎なんだよあのスピード⁉︎」
背後から仕留めようと飛び上がった狼の獣をギリギリでかわして、バランスを崩しつつも懐からキメラを取り出した。こいつで殺るしかない…!
体勢を立て直した狼の獣は俺の首に噛みつこうとする。わざと横に倒れるようにして回避し、奴の首目掛けて刃を突き立てた。しかし、バランスの悪い状態で狙い通りに当たるはずもなく、左肩辺りに突き刺さった。
刹那、腹部に強烈な後ろ足の蹴りが入り、二メートル程後ろにあった木にぶつかって尻餅をつく。
「カハッ…!」
口から生暖かい液体が吐き出され、口内に血の味が広がった。
今ので背骨が逝った。腸の辺りも痛い。
朦朧とした視界で見渡すと、怒りを露わにした奴がいた。左肩から血を流し、息を荒げている。
「ハハ、なんだよ、仕掛けて来たのはお前じゃん…」
じりじりと、焼けるような痛みが腹部を襲う。思わず顔をしかめた。その苦しむ姿を目にして、奴は嘲笑うように口角を上げた。勝利を勝ち誇っているかのように。
狼の獣はゆっくりと歩み寄り、俺の匂いを確かめる。
キメラを握る手に力を込めた。その瞬間、奴に噛みつかれ、肩に激痛が走った。
「------ッ⁉︎」
すぐ横から獣臭が漂う。ギリギリと、ノコギリのような歯が肉を裂いた。
「ぐああぁぁぁぁああああぁぁぁ‼︎」
キメラを握った手をその場の力任せに振り払う。ナイフの刃が何かを切り裂く感覚が伝った。同時に噛まれていた肩が開放される。
「ッ!----はあ、はあ…」
キメラの刃は血に塗れ、頭と胴体に分かれた物体が横で倒れていた。
出血が多過ぎて木の幹にもたれ掛かる。もう喋る気力すら残っていない。そんな中、最後に聞こえたのは、いくつかの人の声だった。
まだサイバー都市メインやからこっちの投稿は遅くなる……と思う