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廻る世界の時計塔  作者: 彩月/(アヤツキ)
4/5

3,塔の中は

Twitterの設定ミスってました。

今度こそよろしくお願いします……。

*大幅に内容を変更しました。ご迷惑をおかけしてすみません

 塔の中に入ると、そこはロビーのようになっていた。

 そこは外観と同じレンガ造りになっており、オレンジがかった柔らかい明りが室内を温かく照らしていた。

 天井ではいくつかの小さなシャンデリアがキラキラとした光を散らしていた。

 その奥には、左右から上に伸びる階段があり、赤いじゅうたんが真っすぐににのびている。階段の先一段高いところにぐるりと通路が囲い、いくつかの扉が並んでいた。

 そして何より目立つのが中央部、大きな円柱状の物が板張りの床からシャンデリアの間を縫って天井まで真っすぐに伸びている。塔のてっぺんまで一直線に貫いているのであろうそれは、全面がガラス張りになっていて内部には細い鉄骨のような金属が張り巡らされているようだ。

 まるで別の世界に迷い込んでしまったかのような感覚に陥る。

 現想的ともいえるその光景に目を奪われていると、その円柱上の構造物の手前に誰かがいるのに気が付いた。

 アルエットさんとナハシュさんがその人のもとにまっすぐ向かっていく。

 その人は、白髪交じりのグレイヘアを後ろに撫でつけて銀縁眼鏡を掛けたいかにも初老という言葉がしっくりくるような人だった。


「レローさんをお連れしました。途中でナハシュさんをお見掛けしたので一緒に来てのですが……、ほかの皆さんは……」

「多分今頃何かに集中して忘れちゃってるんだろうね」

「やはりですか……」


 はあ、と頭に手を当ててアルエットさんはため息をつく。


「ナハシュ君も……、久しぶりだね」

「……そうですね、お久しぶりです」

 

 初老の男性に声を掛けられたナハシュさんが曖昧な笑みを返す。

 同じ管理人なのに久しぶりとはどういうことなのだろう。

 仲が悪いのかとも思ったのだが、二人の雰囲気からは互いに後ろめたさのようなものを感じる。

 すると、気を取り直したように顔を上げたアルエットさんがこちらを向く。


「レローさん、こちらはこの時計塔の最高責任者のブッシュさんです」


 ブッシュと言われた男性はこちらに向き直ると、


「時計塔の総統括官のブッシュ・ウォーブラーです。最高責任者といっても名ばかりでいつもはみんなと楽しく過ごしているだけだからあまりかしこまらなくてもいいから、これからよろしく頼むよ、レロー君」


 と、優し気な笑みを浮かべてすっと手を差し出してきた。

 慌ててその手を握る。


「ラーク・レローです。こちらこそよろしくお願いします」

 

 細かい皺の刻まれた彼の手はとても温かかった。

 その笑みやまなざしはまるで父親のような親しみやすさ、ぬくもりがあった。

 初対面なのにどこか懐かしい、不思議な感覚だ。


「すまないね。本当なら他の子たちのこともここで紹介しようと思っていたんだけどね、みんな真面目な子ではあるんだけど、真面目過ぎて集中しすぎることがよくあるんだ。今もきっと何かしらに没頭してるんだろうね」


 と申し訳なさそうに眉を下げる。


「でも、ちょうどいいかな。君から向かわせてしまって悪いけど、みんなのところを回りながら塔の中を見てくるといいよ。アルさん、案内してあげてくれるかな」

「わかりました。ブッシュさんとナハシュさんはどうしますか?」

「私は先に上に行っているよ。最後の準備があるからね。それに、ナハシュ君とも少し話したいこともあるからね」

「……そうですね、僕も先に上で待ってます」

「そうですか、では後程皆さんを連れて向かいます」

「うん、お願いするよ」

「はい。では、行きましょうかレローさん」


 と、俺そっちのけでとんとん拍子に話が決まってしまったが、まあ、いいか。

 ガラス張りの謎の建造物に向かって進んでいくアルエットさんに続きながら、ふと思ったことを尋ねる。

 

「それで、どうやって上に行くんですか?」


 そう、この塔は外から見たときにかなりの高さがあったのだ。

 まさか、階段で行くのか?

 それ以外に上に行く手段はないだろうし……。

 途方もなさに気が遠くなっていると、


「安心してください。さすがに階段で向かうなんてことはありませんよ」

 

 と、こちらの考えを読み取ったかのようにアルエットさんが言う。

 正直ほっとしたが、同時に疑問に思う。

 さっきも思ったが、階段以外で上に向かう方法があるのか?

 金属の格子があるが扉もあるし、このガラス張りの建造物が階段だと思っていたのだが……

 すると、その扉の前で立ち止まったアルエットさんはいたづらっぽく笑うと

 

「これで上に向かいます。きっと驚きますよ」


 そう言いながら扉の横についていた丸いボタンを押す。

 瞬間、ガシャンという音とともに左右に格子と扉が開いた。

 扉の先は今いるロビーと同じようなデザインの、五人ほどしか入れなそうな小さな部屋のようになっていた。

 戸惑っているとアルエットさんがさっさと中に入って行ってしまったので慌てて後を追う。

 中に入るとすぐに再びガシャンという音をたてて扉が閉まる。

 直後、真下に引っ張られるような衝撃を全身に感じ、思わず壁に手をついてしまう。だが、それも一瞬のことですぐにそれはわずかな浮遊感に変わる。

 

「な、なんだこれ……!」 


 初めての感覚に驚いて腰が引けてしまう。

 すると、すぐ近くからクスクスと聞こえてきたのでそちらを向くと、アルエットさんが口元に手をあてて可笑しそうに笑っていた。

 ここまでずっと、ほほ笑んだりはしていたもののキリっとした硬い表情ばかり見てきていたので、その笑った顔につい目が行ってしまう。

 が、すぐにはっとして姿勢を正す。

 顔が熱い気がするが気のせいだと思うことにしよう。


「それでこの、乗り物? は、なんですか?」

「これはですね、”エレベーター”というらしいですよ。小さな部屋が上下することで人や物を運べるらしいのですが……、詳しい原理とかは私にもわかりません」


 ……まあ、便利な乗り物があるってくらいの認識でいいか。

 そう思っていると、再び引っ張られるような感覚がし、減速したのだとわかる。

 

「共有スペースなんかもあるのですが、今回は飛ばしてまずは他の管理人の皆さんのところに行きましょう」


 エレベーターが止まり、チンという子気味いい音がして扉が開いた。

 ……この先にはいったいどんな人が待っているのだろうか。

自己紹介は長くなりそうだったので次話以降にします。

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