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異世界魔道具フェスタ  作者: 浪紗賀たゆた
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4.冒険者ギルド

「ここが冒険者ギルドです」


 そこにはライオンの顔の後ろに剣と斧がクロスしている絵が描かれた看板がかかっている建物があった。

 扉を開いたアッシュの後ろについて中に入ると、いくつかテーブルとイスが置かれていて冒険者らしき人たちが談笑をしている。

 少し奥には紙がたくさん貼られている掲示板と受付があり、受付には女性が立っていた。

 私たちは受付の前まで歩く。


「あ、アッシュさん、こんにちは」

「こんにちは、ライラさん」

「今日はどのような御用ですか?」

「実は街の近くにウルフが近づいていて、門番長からウルフ討伐の依頼を頼まれてきました」


 あの人門番長だったんだ。


「正式な依頼は門番長が後で出すみたいですが、緊急を要する場合もあるので僕が依頼を出すように頼まれました」

「わかりました。すぐにでもウルフ討伐依頼の手続きをします。それでそちらの方は?」


 ライラさんは私の方を向いて質問してくる。

 

「こちらはルーシアさん。森の中で知り合いました。別の街から来た冒険者です」


 ちょ、冒険者ってところは言わなくていいのに! 

 門のところで話を合わせたのが裏目に出てしまった。

 これじゃ新しく冒険者登録したいって言えない。


「ル、ルーシアと言います」

「そうですか。ようこそシスティアの街へ。しばらくはこの街に?」

「そうですね。しばらくは滞在しようと思ってます」

「でしたらギルドの依頼をする事もあるかもしれませんね。この街でも依頼が受けられるようにしますのでギルドカードを確認させてもらってもいいですか?」


 ギ、ギルドカード……!

 

「あ、あぁ、はいはい、ギルドガードですよね」


 当然そんなものは持っていない。

 どうしよう。

 と、とりあえず失くしたことにするか。

 

「じ、実は森でモンスターに襲われた時に落としてしまって……」

「あ、そうなんですね。それでは再発行手続きを致します」


 再発行……作ったことないのに再発行って出来るものなんだろうか。

 こうなったら出たとこ勝負だ。

 試してみるしかない。

 

「よろしくお願いします」

「初回作成時と同じ手数料がかかりますが大丈夫でしょうか?」


 はい、また問題発生。

 私は今お金を持ってない。無一文だ。


「えーっと、お金も森で落としたみたいで……」


 どうしたものかと困っていると、アッシュが見知らぬ硬貨をテーブルの上に置いた。

 

「ここは僕が払います」

「えっ……でも」

「先ほど助けてもらったお礼です」

 

 イケメンか!

 さっき会ったばかりの人にお金を出させてもいいのだろうか?

 でも、ここで断るのも失礼だし、他に選択肢もないので有難く受け取ることにした。

 

「ありがとう。これでお願いします」

「では、再発行します。名前と年齢をお願いします」


 ね、年齢も言わないといけないのか。


「ルーシアです。年齢は24です」


 どうやらここは私の知っている世界とは違う気がするので、ルーシアという名前で通すことにした。

 何故か名前と年齢を言うと辺りが静まり返った。

 え、やっぱり私の名前って変?

 森の中で二人に自己紹介した時は何も言われなかったけど、気を遣ってくれたのかもしれない。

 そんなことを考えていると後ろのテーブルから大笑いする声が聞こえてきた。


「お嬢ちゃん、虚勢を張るために年齢を偽りたいのはわかるが、そのナリで24は盛りすぎだ。逆効果だぞ」


 どうやらもっと年齢が低いと思われているらしい。

 そんなに背の高い方ではないけど日本では標準的な部類だし、童顔というわけでもない。

 こっちの世界では私はそんなに幼く見えるのだろうか。

 そんなことを考えながら周りの反応を見ていると、部屋の隅に姿見があるのを発見する。

 もしかしたらコスプレしているせいかと思い、姿見の前に行き自分の姿を確認する。

 

「えぇ?!」


 私は驚いて叫び声を上げてしまった。

 姿見に写ったのはたしかに私の姿だった。

 だけど、なんか小さい……というか幼い!

 背の高さもそうだが、顔も幼くなっている。

 ボティラインも以前の体つきよりも全体的に細い。

 中学生? いや、小学生ぐらいにも見える。

 私は胸に手を当ててみる。ぺったんこだ。

 着ている服はマジフェスでコスプレをしてた時のまんまだった。

 本来ならこの体には大きすぎる服のはずだが、何故かジャストフィットしている。


 と、とりあえず、ウィッグとカラコンをはずしてもう一度確認してみよう。

 だが、ウィッグを外そうとしても皮膚が引っ張られている感覚があり外せない。

 触った感触が本物の髪の毛と同じだった。

 今度はカラコンを外そうとして指を目に近付けるが、カラコンの感触はなく目と指がぶつかり痛みが走る。

 い、痛い……。

 理由はわからないが体は小さくなり、ウィッグとカラコンは私の本物の目と髪になっているようだ。

 

 そりゃあ、この見た目で24歳って言われても信じないだろう。

 通りで小さい女の子から「ルーシアちゃん」なんて呼ばれるわけだよ。

 ギルド内にいる人たちが、私の言動を黙って見つめている。

 この空気、どうしよう……。

 

「さ、再発行の続きをしましょう。今度は本当の年齢をお願いします」

 

 私が困って黙り込んでいるとライラさんが助け舟を出してくれる。

 

「年齢は、えーっと……14です」

 

 私の感覚がずれてなければ、このぐらいなら大丈夫なはずだ。

 もう少し幼くも見えるけど年齢が低すぎると冒険者として怪しまれそうだった。

 14歳でもギリギリな気はするけど。

 

「わかりました。ただいま再発行しますのでお待ちください」


 ライラさんはギルドカードらしきものに、私の名前を記入している。

 あれ? 見たこともない文字なのに何故か読める。

 異世界転移特有のご都合主義というものか。

 そういえば、異世界なのに言葉も何不自由なく伝わっている。

  

「記入が終わりましたので、これで後は魔力を流し込んでいただければ完了です」


 そう言いながらギルドカードを差し出してくる。

 魔力を流し込むぅ?

 またもや危機が訪れる。

 魔力なんて妄想の世界でしか扱ったことがない。

 ギルドカードを差し出されたということは、この上に手を置けばいいのだろうか。

 ギルドカードの上に手を置いて、ダメ元で魔力を流れ込めと念じてみる。

 そうするとギルドカードが光りだした。

 

「はい、これで再発行完了です」


 何とか成功したようだ。


「知ってるかとは思いますが、前のギルドカードは使えなくなりますのでご注意ください」

「わかりました。ありがとうございます」

 

 落としたり盗まれたりしても再発行手続きすれば、前のは使えなくなるってことか。

 何かクレジットカードみたい。

 初めて作るから前のギルドカードなんてないんだけどね。

 ギルドカードには名前、ランク、後はギルドの紋章らしきものが刻まれていた。

 ランクの所にはEと書かれている。

 これ生年月日とか年齢の欄がないけど、年齢聞かれた意味あったの?

 まぁ、何はともあれ無事に登録することが出来た。

 

「ぜひ、ウルフ討伐依頼にもご参加ください。おそらく規模の大きい依頼となりますので」

「はい、その時はぜひ」


 さっきのウルフ討伐の事だよね。

 一応ウルフは二匹倒している。

 規模が大きいというのが少し気になるけど、初めての依頼としては良いかもしれない。

 でも、まずは自分の体に起きた変化を調べるのが先だよね。

 見た目の変化は置いておくとして、ウルフに噛まれても全然痛くなかったし、思いっきり動いたら制御出来ずに木にぶつかってしまった。

 あれがチート能力ってやつ?

 

「とりあえず出ましょうか」

「そうですね」


 私たちは冒険者ギルドを後にする。

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