第三話
次に気が付いた時。
俺は、緑の草原の真ん中で、心地よい風に吹かれていた。
空には青空が広がり、太陽が燦々と輝いている。
見回しても、先ほどまでの行列の人々がいるだけで、もはやトンネルも旧道も消えていた。
そうやってキョロキョロしていると、ポンと肩を叩かれる。振り向くと、あのジャージ姿の男だった。
「その様子だと、初めてのようだね」
「ここは、いったい……?」
「簡単に言えば『異世界』だよ。僕たちは、さっきのトンネルを通って、異世界に転移したのさ」
今度は、親切に教えてくれる。だが、まだ俺は理解できなかった。
「異世界……?」
「そうだよ。ラノベやアニメで見たことないかい? 剣と魔法の、冒険ファンタジーの世界さ。ほら、早速、モンスターのお出ましだ!」
男が指差す方向に、顔を向ければ。
ゲームに出てくるゴブリンのような怪物。緑色の肌で頭はツルツル、棍棒らしきものを手にして、二足歩行している。それが数匹、現れたのだが……。
モンスターはコスプレ集団に取り囲まれて、ろくな反撃もできずに、一方的に暴行を食らっていた。
「これが、剣と魔法の冒険……」
自分でも気づかぬうちに漏れた言葉は、呆れ声の響きになっていた。




