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降水確率  作者: 雨世界
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1 君のことが好きです。

 降水確率


 君のことが好きです。


 本編


 その日は、朝からずっと曇り空だった。

 雨が降り出したのはお昼頃。


 僕が雨川と偶然街の駅前で出会ったのは、そんな雨の降った日の午後の時間だった。


 雨川有沙。雨川はすごく魅力的な女の子だった。(美人で、気が強くて、わがままな猫みたいな女の子だ)僕は雨川と出会って、それからすぐに君に恋をした。


「あなた。同じ学校の草野くんだよね?」

 雨川は言った。

 僕は少し驚いた。

「草野進くん。……だよね?」


「うん。そうだけど」

 進は言った。

 進は同じ中学校に通っている雨川のことを無視しようと思っていた。(だって、僕のことなんて、雨川はたぶん、絶対、知らないはずだから)

 でも、雨川のほうから声をかけてきた。

 進は、雨川が自分のことを知っていることに、すごく、本当に驚いた。(二人に同じ中学校に通っているという意外に、接点なんてなにもないはずだった)


「よかった。違ったらどうしようかと思っちゃった」雨川はいう。

「私、雨川有沙。ほら、同じ中学校に通っているんだけど、私のこと、知ってる?」雨川はいう。

「一応。知っている」進はいう。


「なら、よかった。話が早いね」雨川はいう。

「草野くん。もしよかったらさ、傘。一緒に入れてくれない?」と雨川は言った。

「傘?」進はいう。

「ほら。今、雨が降っているでしょ?」雨川はいう。

 雨川の言う通り確かに世界には雨が降っていた。

 そして進は確かに傘を持っていた。

 青色の傘。

 今日の降水確率は六十パーセントだったから、一応、今朝家を出るときに持ってきたのだ。


「傘、ないの?」

「うん。忘れちゃってさ」にっこりと笑って雨川はいう。

「そこにコンビニあるけど?」

「だから、傘を買おうと思っていたら、君を見つけたんじゃない」雨川は進の肩をぽんぽんと二回叩いた。

「ね? お願い。別にいいでしょ?」

 雨川はいう。


 ざーという雨の音が聞こえる。

 雨はこうして話をしているうちにだんだんとその勢いを増していた。


「別にいいよ」

 と進むは言った。断る理由が思いつかなかった。

「ありがとう」

 そう言って、雨川は進のすぐ隣まで移動をした。

 進は傘をさした。

 それから、「どっちに行けばいいの?」と雨川に聞いた。

「あっち」

 と雨川はある方向を指差しながら、そういった。

「わかった」

 そういって進は平然な顔をして、雨川と一緒に一つの傘をさしながら、雨の降る街の中を歩き始めた。

 進は内心、すごくどきどきした。(雨川はまったく平然としていたけど)

 

 自分の好きな子がこんなに近くにいる。 

 進の肩は、雨川の肩にたまに触れたし、傘の下は、雨川の匂いがした。雨の匂いと、夏の匂いと、君の(雨川有沙の)匂いが混ざったような、不思議な香りがした。


「どうかしたの?」雨川は言った。

「別になんでもない」と進は言った。


 雨川の綺麗な長い黒髪が、一つの傘の下、夏の雨の中に揺れていた。進は雨川の黒髪が空から降る雨に濡れないか、ただ、それだけが心配だった。

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