表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/45

6 ルドア王子を困惑させてしまったようで

よく考えると転生モノではなかったので、25日からタイトルを

『目覚めると悪役令嬢だったので、推しcp(NL)のために頑張ります!!』に変更させていただきます。ご迷惑子おかけ致しますが、よろしくお願いします。

 食堂でルドア王子に声をかけられた後、驚いて固まった私の目の前の席に、ルドア王子は座った。

 ルドア王子には1人側近も付いているのだが、私に小さく失礼致します、と声をかけてルドア王子の隣に腰を下ろす。紺色の髪に黄色い瞳を持つこの側近も、乙女ゲームに出てくるに相応しいイケメンだ。

 2人とも私に、先程のルドア王子が言った言葉の返事を催促するでもなく、かと言って何か別の会話をするわけでもなく。ルドア王子達の食事が運ばれてくると、彼らは黙々と食べ始めた。

 私は空気か何かでしょうか。もしそうならヒロイン×ルドア王子の場面で発揮させていただきたい。


「ルドア様、私、そんなに怖い顔をして……おりましたでしょうか」


 ようやく再起動した私が、ルドア王子の食べ終わったタイミングで、ぼそっとつい口走ってしまったのはこんな言葉だった。

 どうやらルドア王子に聞こえてしまったらしく、怪訝な顔をしながらじっと、私を見つめてくる。ルドア王子の隣に座る側近もだ。

 うーん、私にはイケメン達に見つめられ続ける免疫なんてないのですが。後、私個人としては、私を見つめるくらいならヒロインと見つめ合って欲しい。私はその場面を物陰から、壁になった気分で見ているので。

 なんて考えている場合じゃないか。私からルドア王子に質問したのに、心ここに非ず状態は良くない。

 私は、これらの煩悩を一端頭の隅にやり、しっかりと深緑の瞳を見返す。


「……いや、すまない。どうやら私の勘違いだったようだ」


 暫くしてから、何故かもの凄く困惑したような声音でルドア王子に謝られた。その反応はなんなんだ。

 もしかしたら、侍女のシーアの時と同じで、エリエルが言わなさそうなことを言ってしまったのか。エリエルなら確実にルドア王子に近付くヒロインを睨みつけるだろうし。


「いいえ、お気になさらないで下さい。私も少しこぅコホン、私も不躾にミズキさんとルドア様のことを見過ぎましたわ。大変失礼なことを致しました」


 つい本音が漏れかけたが、なんとか咳払いで誤魔化す。お下品だったとしても、興奮しました、とか、さらにエリエルが言わないような言葉を発して混乱させるよりはマシな筈だ。

 それに、落ち着いた今なら分かる。

 私の顔、というか体はエリエルなのだ。悪役令嬢に相応しい吊り上がった瞳は、見た人にきつい印象を与えてしまう。

 それが、ニヤけるのを抑えるためとはいえ、表情筋に力を込めたのなら尚更、威圧感を与えてしまってもおかしくはないだろう。


「あ、あぁ。ではこの件は不問としよう」


「ありがとうございます」


 未だに、ルドア王子は納得しきれていないような、微妙な顔をしていたが、話は終わりだと言わんばかりに席を立つ。

 私もルドア王子が食堂を出てから立ち上がった出口に向かう。まだヒロインのミズキが食事中であることを確認し、私は食堂を後にした。



 1階にある食堂を出てから私は、2階の教室に一番近い階段の踊り場へと向かう。


 ゲームのチュートリアルでは、次にここでアデル・カムベルトと出会う筈だからだ。


 ヒロインが食堂から教室へ向かうために階段を昇ると、1階と2階の中間地点の踊り場前で躓き、後ろから落ちそうになる。

 ヒロインが、痛みを覚悟して目を瞑るがいつまで経っても衝撃がない。丁度その時、アデルも階段を少し後ろから登っていたので、成り行きではあるがヒロインを助けられたのだ。

 手すりを右手で掴みながら、落ちそうになるヒロインを左腕で支えるこの場面は胸熱である。

 アデルは、ノートにも書いたがヤンデレ属性なので、爽やかとは言えないかもしれないが、あっさりとヒロインを助ける場面が割と貴重だったりする。


 もしもヒロインがルドア王子のルートに入るならば、私は全力でヒロインに協力するつもりである。しかし、アデルルートに入るのであれば、可能な限りヒロインとアデルに近付かないよう気を付けなければ、殺されてしまう可能性があり、私にとって危険極まりない。

いや、本人達の気持ちが1番大事なので、くっつくのを邪魔したりはしないし、全く関係ない立場から見ていられるなら絶対見守るのだけれど。


 そんなことを考えてながら、3階へと続く階段の途中で立ち止まる。ここならなんとか角度を調整して、踊り場を視界に入れられそうだ。万が一アデルやヒロインに見付かると面倒なことになりそうだしね。それに邪魔をしたくはないのだ。可能な限り気配を殺し、壁と同化する気持ちで相手に気取られることなく一部始終を見守る。そんな存在に私はなりたい。


 さて、冗談ではないけれど、おふざけは程々で辞めよう。ちょっと、違和感があるかもしれないが、階段の途中で黄昏れてますよ風に手摺りに寄りかかり暫く待つと、ヒロインが登ってくるのが見えた。

 あと数段で躓くだろう、という時にアデルも階段に現れる。

 そして、アデルが階段に足をかけてすぐ、ヒロインの体が傾いた。躓いたのだろう。

 それに気付き、恐らく反射的にだが手を伸ばすアデル。無事にヒロインに手が届き、アデル自身も落ちないように手摺りをしっかりと握りしめた。


「すみません! あの、助けていただきありがとうございます!」


「……これからは足下を見て、気を付けながら歩いた方が良い」


「は、はい」


「じゃあ、失礼する」


「あっ……本当に、ありがとうございました!」


 そしてアデルは、2階に着くと教室の方向へと歩き出したんだと思う。少なくとも3階には来ていないし、時間的にも授業が始まりそうだからね。

 それにしても、やっぱり生で現場を見るのは違う。

 ヒロインの危険に鉢合わせた攻略対象がヒロインを助けるというのは、よくある展開だからこそ、萌えポイントを外さない。

 ちょっとぶっきらぼうに、言葉数少なく答えるアデルと、それでもしっかり目を見てお礼を述べるヒロイン、うん。いいよね!

 やっぱりヒロインがアデルルートに入った場合、私はアデルに殺される可能性があるので協力は出来なさそうなのだけれど、影からこっそり応援させていただこう。そう再認識させられる出来事だった。


 階段で先程の場面を思い出し悶えていると、予鈴が鳴る。

 授業に遅れるのはよろしくない。早く教室に向かわなければ。


 私は上機嫌で階段を降りたのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ