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1 情報整理

 悪役令嬢エリエル・マーリアノルト、長いからもうエリエルでいいかな。エリエルとして生きる決意をした私は、〈ドキラブ♡恋する魔法学園〉の情報を、豪華絢爛な模様の庶民だった私には居心地の悪い机と椅子に腰掛けて、覚えている限りのノートに書いていくことにした。

 普段コピー用紙を目にすることが多い私にとって、紙質が悪いノートに、使い慣れない羽ペンで文字を書くのはちょっと難しかったけれど、仕方がない。書く物があるだけマシだと思う。


 まず、〈ドキラブ♡恋する魔法学園〉は恋愛あり、魔法ありの一般的な乙女ゲームだ。

 庶民のヒロインが貴族ばかり集う魔法学園に入学し、エリエルを筆頭とした、悪役令嬢の嫌がらせにも負けずに攻略対象と恋をして幸せになる。うん、王道ストーリー。

 悪役令嬢エリエル・マーリアノルトはどの攻略対象を選んでも出て来くるキャラで、時には個人で、時には取り巻き達と、時には他の悪役令嬢と手を組んでヒロインを虐め、最終的に国外追放や死刑と言った処罰が下される。うん、これもまた王道ストーリー。私にとっては笑い事に出来ないのだけれど。


 ここまではゲームのパッケージに書かれているような内容。そろそろ魔法とか、攻略対象の詳細とか、ゲームをプレイしないと分からないことも書いていこう。


 まず、この世界では、魔法が一定以上使える者や、珍しい属性の魔法が使える者は15歳になる年になれば強制的に2年間、全寮制の魔法学園で勉強しなければならない。とは言っても、基準を満たすほどの魔法を使える者は基本的に貴族しかおらず、魔法学園自体も貴族向けになっているらしい。

 確か、その昔、魔法学園のあるこの国ラフテンシアが特に魔法に秀でた人を集めて貴族として迎え入れたとかゲーム内でちらっと語られていた気がする。要するに、魔法の才能を持っている人は貴族になり、今まで血筋を残してきましたってことだと思う。

 だからといって貴族しか魔法が使えないというわけでもなくて、むしろこの世界では全ての人が魔法を使える。貴族も庶民も例外なく、1人1属性しか使えないけれど、全員が魔法を使えるのだ。


 庶民だと大抵が火や水といった、日常生活にあると便利レベルが一般的。貴族は血筋のおかげか、かなりすごい威力の魔法が使えたり、ほぼその血筋以外では発現しない属性の魔法がある……ということらしい。


 あ、魔法の属性は火、水、土の順に多く、闇と光はとても少ない。というか光と闇の2属性は、とある貴族の血筋でしか発現しなかった筈。この5属性と、傷を癒やしたり病を治せる聖という、伝説レベルに珍しい属性を加えた6属性がこの世界にある魔法だ。

 魔法は必ず10歳までに発現し、国の管轄する協会で詳しく調べなければならない。


 お気付きかもしれないけれど、主人公のヒロインは聖属性の持ち主です。ついでに言うと、14歳で魔法が発現する。理由は不明のまただった筈。

 主人公は型にはまらないらしい。


 正直に言うと、魔法学園に通う人達と所謂庶民が使う魔法の規模の違いは分からない。だって庶民が魔法を使う場面なんてゲーム内では出て来ないし、ヒロインと攻略対象が会話で少し触れるくらいだったのだから。きっとエリエルの体で生きていく内にもう少し分かってくるだろう。


 とにかく、魔法についてはちょっと心躍るけれど、登場人物についても考えなければならないので置いておく。魔法はまた時間に余裕があるときに詳しく調査しよう。私の命に直結するのは魔法よりも、登場人物達なのだから。



 まず主人公のヒロインから。

 夕日に照らされた稲穂のような金髪に、澄み切った空の色をした瞳、鈴を転がしたような可愛らしい声の持ち主で、公式では名前が ミズキ となっていた。私もミズキとしてプレイしたから間違ってないと思うんだけれど、自分の名前を思い出せないからちょっと自信がない。


 名前の正誤は一旦置いておくとして、庶民であるミズキは15歳間近のある日、目の前で転び怪我をした男の子がきっかけで、怪我や病気を治せる珍しい聖属性の魔法を使えるようになる。協会で調べてみたらここ100年で最高クラスの使い手だったらしい。うん、流石主人公。

 10歳以降で魔法が発現したイレギュラー性と、ギリギリ魔法学園の入学式前だったこともあって、そのまま強制的に入学することになる。

 そして攻略対象の王子や貴族、先輩、先生達との様々な恋愛を繰り広げるのだ。

 ちなみに、綺麗系ではなく可愛い系、癒し系である。


 攻略対象のどのルートでも出てくるのは悪役令嬢エリエル・マーリアノルト。つまり私だ。アクアマリンの髪に寝ても崩れないらしい天然ものの縦ロール、悪役に相応しく釣り上がった目はライムグリーンで、見た人にきつそうな印象を与えている。

 マーリアノルト家は王家に次ぐ権力を持つ公爵家。エリエルは権力に溺れ、周りに威張り散らし欲しい物は何でも、どんなことをしても手に入れる強欲の持ち主。

 絢爛豪華なものを好み、権力財力で私欲を叶える姿は一周回って清々しいほどだった。兄と姉が1人ずついるらしい。


 5人いる攻略対象の全てのルートで悪役令嬢として登場し、ヒロインがハッピーエンドでもバッドエンドでも国外追放、爵位剥奪、無期懲役、果ては死刑や何らかの理由で死んでしまったりとエリエルにとって様々なバッドエンドが待ち構えている。その設定を生かした二次創作で様々な恋愛を繰り広げるのだけれど、恐らくこの世界は公式だと思う。二次創作の方だったらいいけれど、そう上手くはいかないと思っていた方がいいだろう。

 使える魔法の属性は水で、貴族として相応しい威力がある。

 というのに、ゲーム内では窓からヒロインに水をぶっかけたり、パーティーでヒロインが着ていくドレスをびっちゃびちゃにしたりと残念な使い方ばかりしていた。もっと有効活用すればいいのに。


 次に、攻略対象とそれに伴う悪役令嬢についてノートに書いていく。

 まずは同じ学年の3人からにしよう。

 ラフテンシアの第一王子ルドア・フォン・ラフテンシア。磨かれた剣のような銀の髪に、エリエルとはまた違う深緑の瞳を持つ甘いフェイスのイケメン。普段は優しく必要なときには厳しく、文武両道魔法の才能もピカイチな、女子の理想を詰め込まれた完璧なイケメン。魔法の属性は光で、灯り代わりにも攻撃を与える手段としてもばっちり使いこなす天才。兄弟はいないが妹が1人いる。エリエルの婚約者だったりする。

 エリエルは、ヒロインがハッピーエンドで国外追放。バッドエンドなら死刑である。ゲームをプレイしているときは特に感じなかったけれど、今はこう言いたい。元になるけれど、婚約者だったのだから、エリエルにもう少し優しい処罰にしてくれても良くないだろうかと。


 そして王子ルートに出てくる悪役が、王子の2歳年下の妹である第一王女イリーナ・フォン・ラフテンシアである。兄と同じく銀の髪に深緑の瞳を持ち、魔法の属性も光である彼女は重度のブラコンである。

 禁断の兄妹ものの二次創作は胸熱だった。


 次に、エリエルと同じく公爵家の攻略対象について書いていこう。名前はアデル・カムベルト。黒よりの紫色の髪に、漆黒の瞳を持つ彼が扱う魔法の属性は闇である。運営が属性に引っ張られたのか知らないが、元々あまり人と話すのが得意ではなく可能な限り引きこもりたいタイプ。ヤンデレ。カムベルト家の次男である。

 エリエルは、ヒロインがハッピーエンドでもバッドエンドでも殺されるので、エリエルにとって1番関わりたくない相手だと思う。


 このアデルルートの悪役令嬢はエリエル、つまり私だけだ。アデルの兄とエリエルの姉が結婚しており、庶民が自分の親族になるのが嫌だったらしい。私としては、そんなことで命を散らしたくないのだけれど。


 3人目は、テオ・オキシスと言って、子爵であるオキシス家の三男である。明るく照らす炎のような赤髪に金色の瞳は常にキラキラ輝いている。魔法の属性は火で、人懐っこく皆に好かれるタイプ。ヒロインとの恋愛が1番可愛いルートでもある。二次創作でも大人気だった。


 テオルートの悪役令嬢は安定のエリエル以外にもう1人いる。

 エリエル達の一つ上、つまりは先輩にあたる人で、名前はアマリス・アクシュタイン。男爵の爵位を持つアクシュタイン家の次女である。落ち着いたワインレッドの髪に、伸び伸びとした樹木を思わせる茶色い瞳を持つしっかり者のお姉さんタイプ。魔法の属性はテオと同じく火で、テオの婚約者である。

 悪役令嬢ではあるけれど、ハッピーエンドのルートでは、どうしてもヒロインとの結婚を望むテオの気持ちを汲み取り、婚約破棄を行う行動力と決断力を持つ。二次創作では皆が幸せにしなければ、という思いが滲み出る素晴らしい内容が多かった。


 対するエリエルは、庶民が爵位持ちになるのが嫌と言うだけでヒロインを虐める。ハッピーエンドルートでは、爵位を剥奪され、庶民落ちし、バッドエンドルートでは、期間は不明だが投獄される。


 次に、エリエル達の1つ年上の先輩と、先生について順番に書いていこう。まずは先輩からで。

 レッシュ家の長男、ロット・レッシュ。爵位は侯爵で、ダークブラウンの髪に海のように深い青の瞳を持つ。いつも気怠げな彼の魔法の属性は土である。


 ロットのルートで登場する悪役令嬢はエリエルに加えてもう1人、ミリア・フォンディがいる。爵位は伯爵でフォンディ家の三女、そしてロットの婚約者。桃色の髪に藤のような淡い紫の瞳を持つ、自信なさ気なエリエル達の同級生である。魔法の属性は水。

 エリエルがロットのルートでヒロインを虐める理由はテオルートと同じく、庶民が爵位持ちになるのを嫌がったためである。

 ハッピーエンドルートでもバッドエンドルートでも爵位剥奪で庶民落ちである。


 最後の攻略対象は、ジーニア・コメット先生だ。青緑の落ち着いた髪色に、金色の瞳を持つコメット先生の魔法の属性は闇である。爵位は伯爵で、兄弟関係などはゲームで明かされることがなかった為不明。


 コメット先生は生徒に人気で、庶民であることや、聖属性持ちのヒロインを特段気にしていることに腹を立てたエリエルを筆頭に、様々な令嬢によってヒロインが虐められる。

 ハッピーエンドで国外追放、バッドエンドでエリエルは事故死したことが明かされる。

 事故死が1番死因として不明な点が多いので、可能な限り避けたいところだ。


 今思い出せるのはこれくらいだろうか。

 更に情報を思い出そうとしたその時、コンコンと扉を叩く音が背後から聞こえてきたのであった。

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