絶望と希望
入院から2週間後、ある雨の日。
僕はカウンセリングを受けていたけど、何だか不安だった。
ここ最近異様に気分が高まって、自分でもおかしいと思っていたのだ。
そして高谷先生に爆弾発言をされた。
「率直に言う。君は脳に障害をもった可能性が高い」
高谷先生はそんな事を言った。
「何で・・・」
「猫獣人は脳が弱くて細菌が入り込むだけで体に異常が起き易い。
君は入院から何日目で普通に話せるようになった?」
「え?」
そういえば最初はしどろもどろだったけど、いつの間にか・・・。
「多分、1日か2日で」
「やはりな。この症状は猫族躁鬱症候群というんだ。
うつ病の一種だが脳の障害とも言われている」
「・・・」
「信じられないかもしれないがあくまで可能性だ。
完全に決まったわけではないから大丈夫だよ・・・」
僕は絶望せざるおえなかった。
猫族躁鬱症候群(略してCMA)は聞いた事あった。
この病気になった猫獣人は半永久的に直る事は無く、一生苦しむという。
頭痛がよく起きるのもこれが原因だと確信した。
「ユウちゃん?」
「・・・」
病室に戻ってカイちゃんが話しかけてきても、
僕は落ち込んでいたので話せなかった。
「ユウちゃん、どうしたの?何があったんだ?」
「・・・あのね」
僕はカイちゃんに事のすべてを話す。
話し終わるとカイちゃんは心配そうな表情を凍りつかせた。
元気になって一緒に退院しようって約束したのに・・・、
あわす顔が無いよ・・・。
「大丈夫だよ。完治しなくても薬とかあるって聞いた事あるし・・・」
「・・・」
「それに、先生も可能性って言ってんだろ?だったらまだ大丈夫だし・・・」
「・・・」
「だからさぁ、あんま本気にしすぎるのも・・・」
「・・・」
「・・なぁ、元気出してくれよユウちゃん・・・・」
「・・・うん」
うつ伏せになっていたから、声を出しても篭っていた。
するとカイちゃんは僕のベッドに腰掛けて、僕の頭を撫でる。
僕は顔を上げると、優しく微笑んだカイちゃんが居た。
「大丈夫だよユウちゃん・・・」
「・・・うん」
僕は情けない返事しか出来なかった。
カイちゃんは容態が良くなっていて、あと少しで退院できるらしいのに・・・。
僕はカウンセリングでやった検査が分かるまでは入院するなんて・・・
僕は夜中目を覚ました。
カイちゃんは寝ているようで、寝息が聞こえてきた。
ベッドで横になったまま考えていた。
自分は自殺をしかけて、結局障害を持ってしまった。
「・・・自業自得」
そう自分に言うと、枕に一発拳をぶつける。
するとベッドが軋む音がしてしまった。
「・・・ん?ユウちゃん?」
軋む音でカイちゃんが起きてしまった。
「!ごめん、カイちゃん。起こしちゃって」
僕が謝るとカイちゃんは
「実はさ、寝たふりしてたんだ。だからずっと起きてた」
カイちゃんはニシシシと笑っていたけど、
「ユウちゃん。過ぎた事は仕方ないよ・・・」
すぐにカイちゃんは真面目な口調になって話してきた。
消灯時間をとっくに過ぎているので部屋は暗かったけど、
月明かりが僕たちを青白く照らす。
「だからさ、頑張ろう。おいらも頑張って肺炎治すから」
「・・・うん」
「おいらが先に退院しても、ちゃんと見舞いとかしてやるから」
「・・・ありがとう」
僕は嬉しくて、やっと笑う事ができた。
でも、メガネを取っていたからちょっとカイちゃんの顔はぼやけてたけど。
僕はその後すぐに寝ちゃった。
でもその夜はすっきりと眠れたと思う。