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記憶喪失のボッチ冒険者  作者: 六青ゆーせー
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パーティ

とりあえず第一部、終了です。


今後どうするかは、他の小説を整理してから考えようと思います。

僕はリリィとキャンパさんのところに戻った。


「ウラガスミさん、ちょっと甘いんじゃありませんか?」


とキャンパさん。


財産没収ぐらいは考えていたらしい。


「まずは間口は広く取って、できるだけ賛同が得られるようにしたかったんだ。


後で所得税や固定資産税、相続税なんかを作っていけば、問題はないはずだよ」


まずは貴族法を廃止して公正な裁判を行えるようにすれば、それだけでも国民の苦痛はかなり軽減されるはずだ。


貴族トラブルが無くなれば、庶民の暮らしはだいぶ安全になり、カノンの支出も大幅に減る。


現に、あれだけ殺気立っていた貴族たちも、今はどうすれば己の得になるか、あれこれと相談を始め、マイラを敵視する者も、一見、消えていた。


「しかし、望めば貴族であり続けられる、ともおっしゃいましたよね?」


「年金と名誉としての貴族名が残るだけですよ。

世界が反貴族になれば、今、特に決められたわけでもないのに特権的な地位を豊受している様々なサービスは、特に法的に決まったことではないので、やがて無視されるようになるでしょう。


裁判になっても、既に貴族法は無いんですからね」


法的には貴族は存在しなくなるわけだ。


キャンパさんもなるほど…、と判然としないながらも頷いた。


「さて、ウラガスミくんの話も、皆、理解してくれたようだね。

それでは、改めてパーティを始めよう!」


厄介なところは僕に全振りしておいて、ウエンツ大統領は弾ける笑顔でパーティの開催を宣言した。


すぐにアビ皇子とハンベイちゃんがやってきて、


「魔法王様、どうかゾラも共同体にお加えください」


と言ってきた。


ウエンツ大統領と一対一よりは、アビ皇子が入れば二体一で話し合いが進むので、僕は大喜びでOKした。


続いて乙姫様やオガマ大臣も共同国家への参加を約束してくれた。


問題は、この場所が本当に日本列島だった場合、四国と山口、岡山、広島辺が城門の奥で何をしているのか見当がつかないことだ。

日本海側は、一体どこまでマイラなのか、僕には判らなかった。

兵庫ぐらいかもしれない。


ヒューイが連合国家に賛同してくれるのであれば、北には行けるわけだが、アーシアちゃんが心配なぐらいで、今のところは平和な農業国というぐらいの印象だった。


ナガレと行動を共にしているコフィとトムトムによれば、その先には、北の大地へと続く長く恐ろしいトンネルがあるようだが、カンセンシャの王国共々、そこまでは具体的な考えはない。


可能なら平和的に連合国家になってもらいつつ先に進めればいいのだが、さりとて、南も沖縄や台湾が続いている、と考えたら、僕が日本に帰れるのは本当にいつになるのやら、って感じだ。


パーティは、かっきり貴族たちと、僕らに分かれ、ウエンツ大統領のみがニコニコ二つの塊を行き来するような展開になっていた。


「それでウラガスミ君。

いつから連合法の話し合いをするのかね?」


少しお酒に酔った感じで、ウエンツ大統領が聞いてきた。


「えー、マイラ国内も連合国家に理解してもらわないといけないので、数ヶ月ぐらいはかかりますかね?

進捗次第で前後しますが…」


まー、ほんとを言えばマイラというより、カノンの貴族たちの出方を待って、という感じだ。


大人しく貴族を手放してくれれば話は早いのだが、そうならなければ兵糧攻め、という感じになる。


つまり、カノンとマイラが睨み合う内に、多分どこかで貴族はやらかすし、その都市で反貴族の感情が高まれば、マイラになる、という話も出てくる。


そんなことが二、三続けば、ウエンツ大統領がいくら悪役を僕にしようと立ち回っても現実の国力はどんどん落ちていくわけだ。


戦わない戦争、って感じに、これからはなるのだ。


それはそれで良いのだが、僕は、早く役目を終えて、僕の世界に戻りたい。


新作アニメも、漫画の続きも読みたいし、正直、実家でゆっくり素の、駄目な僕で日々を暮らすのが愛おしくなってきている。

出来る魔法王を休みなく続けるのは、結構疲れるのだ。


もし仮に、こんな世界で何十年と戦いの日々を続けたら、多分僕は元の世界に帰って生きるエネルギーを失いそうで怖い…。


ただ政治的な駆け引き、って、結構時間が掛かりそうだよなぁ…。




魔法王ウラガスミが、無限に続く大仕事に頭を抱えている頃、一応、ケンビシ隊は防衛ラインの奥で、閉ざされたままのリンゴクの城門を眺めていた。


「全く動きがないな。

もしかすると、こっちから挨拶にでも行ったほうが良いのか?」


本来の守備兵である新生ゾラの隊長に聞くが、隊長は。


「いやぁ。

あそこが動かないのははるか昔からですよ。

リンゴクというのも、別にあの国の名前ではなく隣国、って意味なんです。


あそことは争いもなく、また交流も全く無いまま、何百年も続いてるんです」


そんなに古い城壁なら、攻撃すれば崩れそうだな、とケンビシは思うが、問答無用の侵略は、流石にケンビシでも避けたいところだ。


ケンビシは大きな欠伸をし、


「ずっと壁を見てるのも、いい加減飽きるよな…」


と天を仰いだ。




その頃…。


ゾラからリンゴクと呼ばれる、実はモーリー王国の国内では、ゾラとカノンが駆逐され、マイラが防備を固めた事を、王に知らせていた。


モーリー国王、サルタン三世は、六将を呼んだ。


「どうも地図が塗り替わったようだな」


ずっと東の相手に対して不干渉を続けているが、サルタン三世は別に東に関心がないわけではない。


ただ、大昔からの国是として、領土を守り、増やす争いなどはせぬように、と太祖の言葉が守られているだけだ。


六将の一人、ムゥヤは、


「特にこちらを攻撃する意図は無い模様です。

国是に従い、黙殺するのがよろしいかと」


白髪交じりの頭で言うが、サルタン三世はまだ二十代、そろそろ己独自の差配も行いたかった。


「ムゥヤは、ここから見ただけで敵がわかるのかね?」


嫌味気味に突っかかった。


「もう何週間も、防備だけを固めていますからな。

攻めるつもりなら軍が前進してきましょう」


サルタン三世は、ふん、と鼻を鳴らし。


「ともかく、何十年かぶりの新たな国だ。

斥候を放ちたい」


ムゥヤにしてみれば、まだ若いサルタン三世が積極策を取りたがるのは予想できた。


「そうですな。

目立たぬ者を集めましょうか」


ごく平凡な身なりの、しかし強靭に鍛え上げられた三人が呼ばれた。


「よいか。

人知れず敵情を探り、報告するのだ!」


サルタン三世の号令の下、三名は城壁を超え、ギーグルたちの防衛網も破って、緑深いゾラの地に飛び込んでいった。

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