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記憶喪失のボッチ冒険者  作者: 六青ゆーせー
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両手に花と龍

「まあ!

あの卵って、ウラガスミさんのお子様だったんですか!」


僕はマイラのパレスで、罪の告白を行っていた。


「えっと、その…、そうなんです…。

あの、全くの出来心と言うか…、人種も違うし、まさか、と…。

今となっては、言い訳ですけど…」


キャンパさんは決然と。


「女性の敵ですわ!」


僕の全身から汗が吹き出した。


「いや、いい訳なんですが!

すっかり魅了されてしまったんです!

あの…、彼女のうつくしさに…。

ラミアの事は好きなんです!

それは間違いないんです!

ただ…」


僕は言葉を切って、


「初めてだったし、僕もよく分かってなくて…。

まさか、あの一回で生まれてしまうとは…。

現実はそんなものではない、と考えていたのです!」


ハァ、キャンパさんは解りやすくため息をつき。


「あなたは魔王なのですから、常人ではないのですよ。

街の若者のようなわけにはいかないのです」


ごめんなさい…、申し訳ありません…、と僕は頭を下げた。


「リリィさんはご存じないのでしょうね?」


キャンパさんはズバッと斬り込んだ。


「…はい…。

知りません…」


「それで、どうするおつもりなんですか?」


うーん、それを相談してるんだけどなぁ…。

ついこの間まで、兄さんに大人の本をもらうくらいで、極めて未成熟な女性観しか持っていなかった僕が、急にこの世界に召喚されて魔王にされてしまったのだ。


この手の問題なんて、全く全然、どうしたら良いのか解らない…。


「当時僕は、自分がゲームの中にいると思っていたんです…」


と僕はヒューイの塔に行った経緯を詳しく話した。


「そんなわけで、まさか現実だとは気がつかず、そうなってしまった訳なんです…」


キャンパさんも困り顔で、


「まあ、男の子に、ゲームの中まで自重しろとも言えませんねぇ…」


僕も軽々に頷くほど自尊心がない訳では無いし、問題がそう単純ではないのは判っている。


「どうでしょう。

カノンは数時間前まで戦争をしていた国ですし、敢えて卵と卵を抱えたラミア様を、そんな国に連れて行かなくともいいのではないですか?」


おお、僕は心の中で手を打っていた。

確かに、わざわざ危険のある場所に行くには、あまりにも不安な状態だ。


今は自重してもらって、王子が十分に育ってから外交をすればいいはずだ。



と、言っても、一言も王様やラミア姫に説明なく、リリィを連れてパーティに出るわけにはいかない。


僕は蓬莱にテレポートして戦いが回避されたことを話した。


皆は、僕が教えるまでもなく放送を聞いていたようだが、僕の戦いは今から始まる。


「じゃあラミア。

君も今日カノンで行われるパーティの事は知ってるかな?」


卵をお包みに包んで大切に抱いていたラミアは、俯き。


「知ってるチロ…」


と頬を染めた。


なんか可愛くって、話しづらい…。


「ラミア、それで卵の事なんだけど…」


「ダーリン、これは手放すわけにはいかないチロ」


「え、そうなの?」


僕は、内心の喜びを隠して、顔を曇らせた。


「実はラミア。

カノンは今までも不可侵条約を何度も破っているグレーな国なんだ。

もしかしたら危険があるかもしれないから、息子と愛するラミアをカノンに連れて行くのは心配だな、と思っていたんだよ」


「あなたはラザード王国よりも、もっと広い世界を救うお方。

あたしや息子が足かせになってはいけないチイ」


うわ、王女様だけあって純粋培養されたピュアな心をラミアは持っている。


「僕にとって君と息子はとても大切だから、そう、息子が、己の身を守れる歳になるまでは、君たちは安全な国で暮らしてもらいたい、と思うんだ」


都合の良いことを考えたが、ラミアは首を振り、


「あたしたちは、蓬莱を祖国として、あなたの覇業を支えるチイ。

無論あたしも手伝うんチイ」


ピュアな言葉に、僕は負けた。


「ありがとうラミア。

蓬莱はシャオチンたちがきっと守るからね。

僕は副官を連れてカノンへ行ってくるよ」


「無事を祈っているチイ!」


僕はラミアの額にキスをした。

一卵作っておいてだが、とても僕は、まだ口にキスなんてする勇気がない。


額でも、心臓がバクバクいっているのが自分に聞こえる…。




こうして僕は、キャンパさんとリリィを連れ、カノンへ向かおうとしたのだが…!


「ウラガスミ!

だから、そんな服で、彼女をエスコートするな、っての!」


あー、そういえばクローラもこの船に乗ってたんだ。


僕はマイラの、元はギルドに向かう細い道、今はとってもオシャレになっている、さざれの小道をクローラに引きづられた。


女の子用の衣装の店が多いのだが、男性用の店も何件かは混じっている。


だがクローラはそのへんを素通りしてしまった。


「ちょっと?

クローラ、どこまでいくのさ?」


僕は、幼馴染とかいたら、こんな感じだろうな、という口調で聞いた。


本当は偽の記憶だったはずなのが、何故かパントンもクローラも存在してしまったため、僕の短い冒険者見習い生活も本物になってしまっていた。


「あんな安い店で吊るしなんか着れる訳無いでしょ。

相手はウエンツ大統領なのよ!」


まー、確かに優雅なカノンのファッションリーダーでもある人だ。


「ここよ!」


それは、どう見ても女性向けの、しかもかなり際どい、衣装の並ぶ店だった。


「ちょっと!

ここは女性服の店でしょ!」


姉がいたら、口答えするような気軽さで、僕はクローラに噛みつくが。


「あんたね!

素のままで、あんたが、あのウエンツに勝てると思ってるの!」


クローラもすっかり弟に説教するような感じに僕を諌めた。


「いや、別にルックスで勝つ必要なんて!

大体、向こうは大人の男性なんだし、僕はまだ子供なんだよ」


卵の父なのは忘れて、僕は言った。


「だーかーら。

子供なりの魅力を引き出すには、少しユニセックスなくらいが良いのよ。

ここはソドムで売出中の美少年カオル君も御用達の店なのよ」


その少年は、僕は実は知っていた。

いつかパプとフリットで見た映像の中で、リドリーさんに、散々にいたぶられて快感の涙を流していた少年が、ケロっと鮮やかな中性的な衣装を着て、なかなかの美声

で歌いだし、しかも今、女の子たちに大人気なのだ。


まさかAVを見たとは言えないが、しかし、魔王ともあろうものが、あれと同じフィールドに立つのは、ちょっと、いや、かなり嫌だった。


「待ってよ、僕はあんなになりたくないよ!」


かなりの魔王パワーで尻込みするのだが、向こうも鍛えた軍人、ずるっ、ずるっと引きずられる。


「あんたもよく見たら、睫毛も長いし、ちゃんとメークすればかなりのもんよ!」


いや、それはヒクイドリの塔でのショタ化の影響であって…。


それを考えると、あの世界では愛の戦士にまでなっていたのを思い出し、一気に力が抜けた。


僕はイーナさんというデザイナーの店に、引きづられて行った。

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