思い出す
ビルは、たぶん二十階建てぐらいの高さの、ひょろ長い建物だ。
ピカピカに磨かれた灰色の石のホールを抜け僕は男たちとエレベーターに乗った。
この世界のエレベーターは、円柱型で、何階、とかも表示されない。
代わりに、ボタンを押すとすぐ来るようになっていて、思うに、一つの縦穴にエレベーターは一つではないらしい。
だからビルに入って、ものの何十秒かで、僕は高層階の、立派な木製のドアの前に立っていた。
この世界の、大抵の製品は、紙に似ているが、重さや強度はプラスチックに近いもので出来ていて、ハヌマーンの僕の部屋の机やベッドもそれだった。
木製、というのは、よっぽどの高級品、ということだろう。
男たちがドアをノックすると、入れ、と声がした。
ガチャリと男がドアを開け、どうぞ、と僕を招いた。
僕は、かなりドキドキしながら部屋に入った。
立派なソファーセットがあって、男が、と言うか少年が、ジーンズとTシャツ姿で座っていた。
僕は、驚いて声が出なかった。
相手も、咄嗟に声が出ず、お互いに見つめ合っていたが…。
やがて、同時に言った。
「…あんた、誰だ…?」
そう…。
僕は、てっきり、僕のお兄ちゃん、イオリが魔王なのかと思っていたのに…。
そこにいたのは、なんかヒョロ長い、変な少年だった。
「あ…、と、僕はウラノカスミ。
台東一中の三年だ。君は?」
相手は、茫然としていたが、
「俺…はっ…。
そうだ!
俺も中三だ。
確か…、月島三中のイトウカツマサと言う…。
部活はサッカー部。
体育は五、その他は三で、美術や音楽は二、
剣道もやっていたから、俺は強いぜ!」
一気に喋って…!
「おおっ!
お前に会ったお陰で、全て思い出したぜ…!」
大感激して、カツマサは僕に抱きついた。




