ボッチ
ユースはエアキーボードを叩きながら唸っていた。
標的が、一瞬で消えると、全く別の地点に現れたのだ。
テレポートと考えるのが一番自然だが、しかしテレポートは大きなエネルギーを使う魔法だ。
魔王のウラガスミは無尽蔵の魔力で乱発しているが、本来は簡単に個人で使えるようなマジックではない。
こんな小さな標的が、ホイホイ使える力では、普通は、無い。
それでも一日一回とかなら、使えない訳でも無いのかもしれないが、しかし実質、百メートルも離れていない場所に現れた。
意味がないのだ。
逃げおおせるつもりというよりは、まるで遊んでいるかのようだ。
今、ソーニャが追いかけているが、ひらり、ひらり、と交わすばかりだ。
奥からタオが飛んできた。
長年の連携プレーで左右から挟むつもりのようだ。
前世界からの戦友であるタオとソーニャの息の合った挟み打ちで戸惑うかに見えた火の玉だが、炎の中で顔のようなものがニヤリと笑うと、再び、消えた。
またテレポートか!
無論、外見は小さな青い火のモンスターだとしても、中身はあのサトノホマレ、大きな魔法も使えるのかもしれないが、エネルギーの流れは止めているはずだ。
ユースはレーダーを操作して、
「O-18に飛んだみたいだ!」
叫んだ。
ニィーゴが、
「任せて!」
叫ぶと、大きくジャンプをする。
巧みに青い炎の顔の後ろにフワリと浮くと、両手で左右から青い炎を挟み込んだ。
「捕まえた!」
ニィーゴは叫ぶが…。
瞬間、三度目のテレポートが発動した。
間違いない…!
ユースは確信した。
サトノホマレは、どこかに、まだ大量のエネルギーを隠し持っているのだ!
よく考えてみれば、他の魔術師と違い、サトノホマレは全く老化もしていなかったし、カゲユさんを開放した後も巨大ロボットで暴れている。
大きなエネルギー貯蔵庫…。
ユースは激しくキーボードを打ち始めた。
「ユース!
奴はどこよ!」
ユリイカが熱くなって叫ぶ。
「みんな、しばらく自分たちで敵を探して!」
珍しく、ピシャリとユースは叫んだ。
まずは敵のエネルギーを絶たないと、サトノホマレは、おそらく倒せない…。
ユースは確信した。
地下都市は広い。
勇者たちは四方に散って青い炎を探した。
それとは別に、地上の座標三◯に向かったのはフェール君の一団だった。
全員飛べるが、
「まあ、慌てるほどの事でも無いよ。
既にビットで補足している」
語り、白衣のフェール君は胸を反らして悠然と歩いた。
「もー、そんな事言うて、ウラガスミに迷惑かけたらどーすんの?」
ミズハは小言を言うがユース君は全く気にしない。
「相手はおそらくトカゲだ。
歩いても追いつける相手さ」
少年勇者隊共々のんびりと歩いて行くと…。
「フェール博士!
正面三百メートルにトカゲらしき生物を見つけました!」
シグモが叫んだ。
「ん、判ってる。
皆、驚かせないように周りを取り囲むんだ」
少年勇者隊は音もなく散った。
「では勇者隊、砂に変化。
そのままトカゲを取り囲め!」
砂ならなるほど横に広がれるし、六人でトカゲを包囲できる。
勇者隊は砂のまま、ジリジリとトカゲを中心にした円を、小さくしていった。
トカゲは、日光浴でもしているように、割れた建物の破片の上で動かない。
砂の塊となった少年勇者は、動かないトカゲを取り巻きながら、少しづつ輪を狭めていった。




