ボッチ
サトノホマレ捜索は、小動物に変身している、と判明したため一気に進展した。
ユースレーダーで、
「座標三十に一つ、空中座標A-1に一つ、もう一つは天井αの地点だよ」
ユース君が、特定し、皆は自分に近い場所に向かった。
僕とチャオンは天井へ向かう。
αというのは、天井部を二四分割した内の、1番北西の角の部分だった。
魔法エンチャントを破壊したため、だいぶ薄暗くなってはいたが、動くものがいれば、例え蝿でも見逃しはしない。
しかも、僕の腕には、サトノホマレの臭いを覚えている牛雄もいるのだ。
そしてチャオンはユース君の位置特定を理解しているようにαに向かって一直線に飛んでいく。
チャー!
チャオンは何かを発見したようだ!
同時に牛雄も、
「いた!
あっちだ!」
とチャオンを追うように飛び始めた。
僕もエレメントに注意を向けると、ほんの微小だが生き物のエレメントを捕まえ、二人を追った。
チャー! と、スピードで牛雄を上回るチャオンが一足先に天井部の青い部分に襲いかかるが、どうも上手く捕まえられないらしく空中で踊るように小刻みに飛び回る。
後を追う牛雄も、
「ウラガスミ!
こいつ、ちっちゃ過ぎるぞ!」
と僕を呼んだ。
一足遅れた僕には、未だチャオンが不思議な踊りを一人で舞っているようにしか見えなかった。
小さい…?
しかしハエぐらいなら、チャオンは簡単に捕まえられるはずだけど…?
おかしいな~、と思いつつ接近すると…。
なにやら極小の、しかもかなり高速で飛行し、かつすばしこい飛虫のようなものが、僕にもようやく見えてきた。
僕は、ピーターという感覚を増幅するマシンを体に収めているため、一旦見えたものは、ズームで見ることも出来る。
目を凝らし見てみると、どうやら蝿程の大きさの、やや羽が広めのトンボが、くねくねとチャオンの尖った顎を巧みに避けて逃げ回っているようだ。
トンボ…?
だが、トンボはもっと直線的に飛ぶ生き物だった気がする。
そして…。
チャオンの口がトンボの腹を掴んだ、と思った瞬間、なんと細長いトンボの腹は、グニャリと曲がった!
それは、まるで蛇のような動きだった。
えっ…、と僕は、呟いていた。
それは昆虫の透明な羽を持った、蝿程の大きさの蛇だった!
しかも顔は、あの虫と同じ、サトノホマレそのものだった!
嘲笑うかのような悪意の浮かんだ表情を浮かべた、わずか数センチの羽虫が、敏捷なチャオンを小回りで上回り、ブンブンと飛び回る。
チャオンを援護しようにも、二匹は触れ合うほどの接近戦を果てしなく続けているので、攻撃は不可能だ。
なにか支援魔法のたぐいがあればいいのだが、いかんせんサトノホマレはチャオンと密着していて、流石に高速でしかもめちゃくちゃに飛び回る羽虫にだけマジックを使うのは不可能だった。
僕は、え〜と、え〜と、と、慌てふためいた。
一つ、あれが使えれば…、という技もあるのだが…。
あれ、ゲームの中での必殺技で、しかもバグなんだよな…。
どーしよーかな~…、と悩んだが、とにかく僕に出来るのはトライするだけだった。
僕は叫んだ。
「必殺マジック、バグ! 発動!」
一瞬、やはり効かなかったか、と思ったが…。
徐々にチャオンと羽虫の動きは遅くなり、空間に、10、の数字が浮かび上がった。
やった!
現実でこれが使えれば相当に戦いは有利になる!
僕はベルトからスリングショットを取り出し、小石を一つ、取り出した。
石入れにはマジックで作った、完全に球体の石だけが入っている。
僕はゆっくりスリングショットを引き絞り、チャオンと羽虫が重ならなくなる瞬間を狙った。
スローモーションでチャオンと羽虫は動き、やがて羽虫はチャオンの足元に逃げていった。
ほぼ鳥の足そっくりのチャオンの足から、するりと羽虫が外に動いた。
だが、おそらくそれも一瞬だろう。
僕は狙いを定めて、弾を放った。
高速回転した真球の小石が、羽虫に向かう。
僕と、僕の放った攻撃は、マジックバグの影響は受けない。
唸りを上げて、弾は羽虫に突き刺さり…。
爆発するように四散した!
ユリイカは空中座標A-1にマイディリンを向かわせていた。
最速でユースから送られた場所に向かうが、何も見えない。
「ちょっと、アンタ!
どこに敵がいるのよ!」
「あ、今、B-3に現れたよ」
この広い地下空間では、かなり明後日の方角だ。
ユリイカは怒りながらも、無言で杖を方向転換した。
ソーニャがB-3に向かう。
その先には、チラチラと揺れるように輝く、青白い発行体があったが…。
不意に光は消えた。
「何だあれは!
テレポートするのか?」
ソーニャは叫んだ。




