ノウサギ
「ユース君、五人のサトノホマレを探せる?」
無論マリンも探査ビットを飛ばしているし、月光も隠密行動で探査を続けているが、ユースレーダーも頼りたいところだ。
「いざ五人を探すとなったら、ここって結構広いわよね〜」
ユリイカが他人事のように言った。
実戦以外は自分の仕事ではないと思っているらしい。
八組の勇者たちの戦いと、ギャオン親子たちの攻撃で都市は焼け野原のようになっていたが、まだ建っている建物も多いし、僕がチャオンとエレメントを壊して回ったときも、かなり広く感じた。
ユース君は得意のエアキーボードで捜索し、ビットもどしどし地下空間に転送させ、ピクシー君たちもロボット君たちも右に左に飛び回っているが、サトノホマレ発見の報告は無い。
「地表にはいないようだよ~」
ピクシーの報告を受け、パピーが教えてくれる。
「侵入可能な建築物にはピットを入れてるけど、見つからないねぇ」
マリンも報告する。
「僕のレーダーにも感知はないよ、ウラガスミ君」
ユース君も首を振る。
「地表にいないとすると地下かなぁ」
僕は困った。
地下はピットを飛ばすという訳にいかないし、なにしろ捜索範囲が膨大だ。
「無問題だよ!」
フェール君が目をキラキラさせて叫んだ。
「少年勇者隊、変化、土の化身!」
タルカたちは瞬時に茶色いヒーロースーツ姿に変わった。
「皆、ここから四方を捜索するよ!」
「ラジャー!」
少年勇者隊が、まるで水に飛び込むように、ジャンプして土の中にダイブした。
「俺も探すぞ!」
ゴカイ小僧はドリル付きのゴカイを無数に土に放った。
「俺、臭い覚えているぞ!」
言い出すのは、今まで、ただただ僕の血を吸っるだけだった牛雄だ。
「へー、牛雄、臭いを追える?」
牛雄はコクンと頷き、
「こっちだぞ!」
と、初めて自分で飛び始めた。
飛べばそれなりに早い牛雄は、ズンズンと進み、
「あれだ!」
と指を指した。
「え、何あれ…」
僕は引いた…。
それは長さ三十センチ程の、ほぼ虫のような生き物だった。
だが、決定的に虫と違うのは、これが内骨格の生き物だということ…。
足は昆虫のように六本あるが。
そして顔は、人間の顔が、確かにサトノホマレに違いない顔がついていた。
あまりのキモさに、僕は即座に消滅のマジックを使った。
キィ、と甲高い悲鳴を上げて、虫型サトノホマレは即座に消滅した。
「みんな!
サトノホマレはどうやら、人の姿じゃない可能性があるよ!」
僕は仲間にテレパシーを送った。
「そうだとすると、始めから探し直しだよ~」
パピーは嘆く。
「生き物全てに範囲を広げると…」
ユース君は操作範囲を広げた。
一方、マグナ三姉妹も五人のサトノホマレを探して飛んでいたが、
「あら、見て。
可愛いウサギさんよ!」
アナが嬉しそうに叫んだ。
草も生えない地下空間に、一匹のやや大柄なウサギが、のどかに跳んで大地を駆けっている。
抱きしめようと上空から近づいたアナだが、うさぎは穴の中に消えた。
「ああ。
穴に飛び込んじゃったわ!」
ベスは、
「遅刻とか言ってなかったか?」
と、妹をからかうが、今度はリズが。
「あ、穴からウサギが出てきた!」
アナウサギの仲間は、地下に広いトンネルを作る。
ベスの前から消えた場所から十メートル以上は離れていた。
リズも静かに上空から忍び込んでいこうとするが、うさぎは空を賭けるが如く何メートルも高々と跳ねると疾走し、ベスの方向に向かう。
「あ、こいつ、こっちに来やがった!」
アナやリズは可愛いと思っているようだが、ベスに真っ直ぐ突進してくる様子は、何か獲物に向かう肉食獣のような必死な獰猛さを感じる。
ベスは、思わず空中に逃げた。
だが…。
ウサギは、驚くべき跳躍力を見せた。
ベスの、頭上にウサギがいた。
…ヤバい…!
ウサギは、勝ち誇った顔で、薄く笑う。
笑う?
ウサギが…?
はっ、とベスも気がついた。
これはサトノホマレだ!
「みんな、これサトノホマレよ!」
叫びながらも、ベスは死を覚悟した。
ウサギは跳んでいるのではない。
飛んでいるのだ。
そしてこの低空で頭を取られた以上、もはやどこにも逃げ場はなかった。
電気を発する時間もない。
すぐにベスは頭を砕かれるだろう。
アナやリズは泣くだろうな…。
上手くウラガスミが励ましてくれるといいのだが…。
と、思った瞬間…。
背後から伸びた白いものが、ウサギを一飲みにした。
愕然とするベスの視線を受けて、ポーボーはうまそうにサトノホマレを咀嚼していた。
「変なもの食べちゃ、駄目よ…」
ヌーボーに助けてもらった感謝に撫でながらも、ベスは悪食のヌーボーを心配した。




