サトノホマレの最後
「やあ、マイラの魔王君。
ここまで攻め込むとは、なかなか優秀なようだな」
「仲間の魔道士は、皆、倒したよサトノホマレさん。
もう降伏してくれないかな?」
僕はサトノホマレの靴底を睨みながら脅した。
ふふふ、とサトノホマレは口の中で笑い。
「奴らは無能な癖にクチバシを突っ込んでくるので、私としても目障りな存在だったのだよ。
むしろ君たちには感謝している。
そして、一つ魔王君に教えて差し上げるが、降伏するのは君たちの方だ。
仲間を残さずここに連れてきたのは間違いだったな。
この場所では、君たちの魔法は完全に封じ込まれている。
ここの機械は、そのためのものだ。
観念したまえ」
え、っと思ってファイヤーボールのマジックを使おうと思ったが、不発だった。
周りを見ると、タオやユリイカたちも戸惑っている。
「なるほど。
魔法が使えないというのだな…」
むしろ喜ぶ奴が一人。
ケンビシはスラリ、と剣を抜いた。
「残念だなケンビシ君。
この中で私は唯一、自在に魔法を使うことが出来る。
楯突くのなら、君から生贄になってもらおう」
うーん、そりゃそうだよな。
数の優位はこちらにあるのだ、サトノホマレがそのぐらい考えないわけがない。
僕は思わぬピンチに、ううっ、と唸るが。
もしかして…、と考え、ベルトからスリングショットを取り出した。
「ウラガスミ君。
愚かだな、そんなもので私がやられるとでも思っているのかね?」
「まー、何も試さないまま、降伏は出来ない、と僕は考えます。
一発打って試してみてもいいですか?」
サトノホマレは声を上げて楽しそうに笑い、
「やってみたまえ」
まーカマキリが戦車に威嚇してるようなものだから、確かに滑稽な実験だ。
ただし、僕の手にした小石は、小石に偽装してはいるが実は攻撃用小型ピットなのだが…。
笑って許してくれたサトノホマレの恩情に感謝し、僕はサトノホマレの下顎を狙って、スリングショットを引き絞った。
弾は、当たり前だがサトノホマレの靴底の数十センチ前でバリアに阻まれる。
だがビットには、小型ながらも魔法を解除する装置が組み込まれている。
魔法を無効化出来るのは、何もカノンだけじゃないのだ。
一瞬止まったスリングショット弾だが、実は小型ビットなので弾かれずにその場にとどまり、バリアを解除すると、そのままサトノホマレの喉仏に突き刺さった。
そのタイミングで、僕はベルトに吊るした石をいれる袋から、片手で掴めるだけのピットを取り出し、空中に撒いた。
サトノホマレが、勇者を滅ぼすべく強力な破壊魔法を打ち込んでくる。
が、ビットは魔法ではない。
電磁的バリアで、攻撃を防ぐ。
「ゴカイハリケーン!」
ゴカイ小僧が、自分の乗っているゴカイの塊を四方八方に飛ばした。
ゴカイは魔法ではないし、ゴカイドリルはゴカイの、牙を変形させたものだから魔法抑止システムの対象外だったのか、はたまた僕のスリングショットでサトノホマレの制御が一瞬、緩んだのか、辺りの機械に無数の穴を開けた。
「参る!」
ケンビシが叫び、左右の壁を蹴り上がる。
これは魔法を使えないケンビシの技なので、パルクールと呼ばれるレッキとしたスポーツだ。
熟練者はケンビシのように左右の壁を跳んで登ることも可能なのだ。
数度のジャンプでサトノホマレの正面に飛び出したケンビシは、気合一閃、サトノホマレの首を剣で一刀両断にした。
「げしし…。
ピクシーたちが機械の内部を破壊してるよ」
パピーも一瞬で最高の仕事をしてくれていた。
ゼアさんは光子弾をサトノホマレの胴体に撃ち込んだ。
ユース君は、エアキーボードで、
「ウラガスミ君。
ここの機械は、無効化出来たよ」
みんな仕事ができる子なので、僕は本当に助かる。
タオは両手を重ねて、
「消滅!」
超高温の火炎が、サトノホマレの胴体を、火葬場のように一瞬で焼き払った。
一方、落ちたサトノホマレの頭は、ニィーゴが左右から手で挟むと、グシャリと潰した。
血が飛び散るが、ユリイカが即座にそれを 砂に変える。
僕がスリングショットを打ってから、たぶん一分もかからず、サトノホマレは灰と砂の僅かな山になっていた。
「やったね、魔王!」
フェール君は明るく叫んだ。
フェール君も頑張った。
彼が動くととんでもない破壊工作になりかねないから、何もしない、という英断は素晴らしい。
が、ドゥーン、と爆発音と共に部屋がグラグラと揺れた。
「あー、謹厳実直なロボット君たちが夢中で破壊工作を続けてるんだった」
僕はみんなとテレポートで地下空間に戻った。
眼の前で、巨大ハンドに、今や支えられたスーパーロボットが、紅蓮の炎に包まれ、あちこち爆発しながら、燃え落ちていた。
僕はロボット君たちを回収して。
「やれやれ、戦いは終わったのかな…」
と、感慨に耽ったが。
「ふふふ、それで私を倒したつもりかねウラガスミ君。
私には五つの肉体があるのだよ!」
うわ、ズリ〜。
せっかくみんなが頑張ったのに、後出しでそ~言う事言うかね、性格悪いな…。
と、僕は心の声を言葉にしていた。




