ユースの戦い
ミズハの両肩に浮いたスーパーノヴァが、ガッと唸り、2条の光線を老人の一体に発射する。
だが、敵は老人とは思えない敏捷さでビームを避け、火炎弾をミズハに撃ち込んだ。
「水の盾!」
ミズハのブレスレットには水の盾が組み込まれている。
それでミズハは火炎弾を防いだ。
フェールは真横に走って行く。
逃がすまい、と三人の老人が火炎弾を発射した。
「待ってたよ!」
フェールはスーパーノヴァだけを後ろに向け、火炎弾めがけて二門のビーム砲を発射した。
スーパーノヴァは、二つのビーム砲の角度次第で、様々な撃ち方の出来る武器だ。
三つの火炎弾を飲み込み、ビームはそこから大きくカーブして一番端の老人に命中した。
ミズハは、水の盾を使いながら老人たちに接近し、いよいよ拳の戦いを挑もうとしていた。
老人の一人が火炎弾を撃つ。
ミズハは、さらりと水に体を変えて、手近な相手を覆い尽くした。
ガボッ!
不意に水に覆われた男は、息を貯める準備も無しに、思いっきり肺に水を吸い込んでしまった。
普通に水に飛び込むのならそれなりに泳げる人間も、急に水を呼吸器に入れてしまえば一瞬で窒息の危機になる。
周りの二人も、仲間に火炎弾も撃ち込めず、途方に暮れた。
フェールは、水を操るミズハの弟であり、自身、風を操る能力を持つ。
ただし、生来の知能のため、おおよそその力を使わないだけだ。
フェールを狙った三人の火炎弾は、なにもない焼け野原を弾けさせた。
自身を風に変えたフェールは、そのまま最も遠い老人の喉笛を、風の刃で切断した。
水に、海流のような層があるように、空気にも層があり、特殊な強風の層が、互いに逆の方向に走ったとき、カマイタチと呼ばれる自然現象が起こる。
これは建物や木立のような、一定の硬さを持つものは傷つけないが、人の皮膚のような、極めて柔らかく、何も覆っていないものは、容易く引き裂く。
老人が動脈を切断され、即死する間に、フェールは手前の人間の腹に拳を撃ち込んだ。
神細胞を肉体に宿したフェールのパンチは、大の大人も吹き飛ばすが、今のパンチの目的は、接触状態でブラックホールを作ることだった。
きゅん、と一瞬の風音を残し、パンチを撃たれた老人が消えた。
フェールの敵は全て死亡し、ミズハも二人目に襲いかかる。
「勇者隊、稲妻の化身となり、塔の中の老人と、ミズハ姉ちゃんの敵を遠隔攻撃!」
稲妻が走り、二人の老人が吹き飛んだ。
同時に、ミズハとフェールの魔力を封じていた呪いも、消えた。
ユースとユリイカが進んでいたのは町の東側だった。
ユースはプログラム変更ウィルスさえ手にすれば、銃など使わなくても周りのロボット全てを書き換えられるので、エアブラインドタッチをしながら空中を進んで行く。
ユースが遊んでくれないので退屈なユリイカは、猫が気まぐれに部屋を荒らすように、あちこちのビルを砂にしながら、どんどん膨らんでいくユース軍団の上を気だるげに飛んでいた。
「ユース様、そろそろ悪の魔道士の塔があります!」
ユースのゴーグルに地図が現れ、地点が示された。
「ユリイカ。
あと五百メートルだよ」
「ふーん」
すっかりスネていたユリイカは、
「あたし、ちょっとヤル気が出ないのよね。
ユース、やってくれる?」
うっそりと言った。
ユースもユリイカとは長い付き合いなので、
「ん、判った…」
と軽く呟く。
せっかく大量のロボットが味方についたのだから、別にユースが先陣を切るまでもない。
ウラガスミから支給されたプログラム改変銃を改良してレーザー銃にし、ロボットたちに配ると、魔道士の三角錐の塔に一斉攻撃を仕掛けた。
が、魔道士はすかさずバリアを張り巡らす。
「ユース様、バリアです!」
「ん、平気平気。
すぐ無力化するから」
エアキーボードでブラインドタッチをし、バリアの発生装置を特定すると、配線に過電圧をかけ、破壊した。
レーザー自体はライフルタイプの小型のものだが、何しろ、今もロボットは増え続け、万に近くなっていたので、光線の性質上、集まれば集まるほど大出力の砲に近い破壊力を持つ。
やがて入口の扉が、破裂しながら中に開いた。
「愚かなマイラの勇者ども。
扉が開いたことを、すぐに後悔させてやる…」
女性的な声と共に、扉からあふれる程の何かが飛び出してきた。
それらは道で扇状に広がった。
蛇だ。
人間ほどの長さのある、蛇の群れがロボット軍団に襲いかかった。
「へー、生きている蛇のようだね。
そして毒があるみたい」
他人事のようにユースは言う。
ロボットに毒蛇など意味がないし、ユースは高性能なスーツに守られていた。
第一、ユースもユリイカも空中なのだ。
地を這うヘビなど動物園で鑑賞しているようなものだった。
が…。
ヘビたちは、魔法の力か、不意に浮き上がるとミサイルのごとくユースとユリイカを狙って飛んできた。
「迎撃の電撃!」
ユースはより早く、キーボードを連打する。
ヘビたちはユースやユリイカに近づくと、高圧電力で焼き切られた。
その間もロボットたちの攻撃により、塔は側面が爆発した。
「おのれ、目にもの見せてやる!」
女性的な声が怒声を上げた。




