フェールの戦い
フェール君と少年勇者隊、それにミズハは、ミズハの水のバリアーに守られながら、市街地を進んでいた。
彼らの後を、味方にプログラムし直したロボットたちがゾロゾロと続いている。
「ふーむ、あの羽根毛の生えた恐竜は、どういう原理で尻尾からビームを出してるんだろう?」
フェール君は、ほぼ真上を見たまま歩いている。
「オシッコが爆発するんじゃないですか?」
とシグモ。
「ふむ、だとしたら、ぜひ構造を知りたいな。
皆のオシッコが爆発すれば、ゼロコストで破壊力バツグンの火力が手に入る」
「フェール君、やめて!」
ミズハは、フェールが別に冗談を言っているわけではないのを理解していた。
可能なら、ホントに作るのがフェール君だ。
戦闘時に使うから、とか言って膨大なオシッコタンクを岩塊戦艦に取り付けかねない。
凄い臭いでも、それが有用なら毛ほども気にしないだろう。
「フェール博士。
この先に魔術師の塔があります。
でも、火炎魔術の天才ですよ」
フフン、と笑うフェール君。
天才、とか聞くと強烈な対抗意識が芽生えるのだ。
「天才か、面白いね…。
ぜひ、どう天才なのか見せて欲しいよ!」
目の前のビルが一気に吹き飛び、その先に、今まで見えなかった円錐形の建物が浮き彫りになった。
「ブワッハッハ、それ以上近づくと何であろうと爆破するぞ、マイラの子供たちよ!」
さすがに少年勇者隊は、ささっ、とフェール君を守る形に集まった。
「フェール君。
いきなりブラックホールとか、やめや」
ミズハは嫌な予感に駈られた。
「いやー、そんな上等なもんじゃないでしょ。
勇者隊、水の化身に変身!」
ルルイラとゼロ距離で繋がった少年勇者隊は、岩塊戦艦内の仲間のエネルギーを直に受け取り、七色の変身を遂げる。
水の化身もその一つだった。
「なー、フェール君。
火炎魔法なら、うちが相手をした方がいいんちゃうの?」
ミズハはド正論を問うが。
「だって!
それじゃ、つまらないじゃない。
適度にピンチとかあった方がいいんだよ!」
普通は、いかに短時間で敵を制圧するかが軍の戦いだが、それはフェール君には響かないらしい…。
「じゃあ皆、敵の塔を空中で取り囲むように分散、接近せよ!」
フェール博士を心から尊敬している少年勇者隊は即座に行動に移した。
「バァカめ!
そんなチビどもは焼き殺してくれるわ!」
赤銅色の円錐の塔からビームが六発、同時に打ち出され、少年勇者隊は一瞬で消えた。
「フェール君!
あんたが無茶言うから、亡くなってもうたやないの!」
ミズハは怒るが、フェール君は。
「お姉ちゃん。
水は固体とは限らないんだよ」
確かに!
水魔法の使い手ミズハも、もちろん知っていた。
「ちょっと待って!
確かに水は蒸気にもなるけど、ビームの高熱じゃあ気化しちゃう可能性もあるやんか!」
「ハッハッハ。
全く問題なし!
そこは岩塊戦艦から百ニ人が原子一つ一つをコントロールしてるから」
仲立ちがルルイラなのは子供だけの秘密なので、ミズハも知らないが、フェールは何でも出来ると思っているので即座に納得した。
「だけど、気体じゃあ何もでけへんやんか?」
「何も出来ないー?」
フェール君は、ほとんど大喜びでポーズを取った。
「水が気体になるとどうなるのか?
なんと、千七百倍に膨張するんだよ!
昔は蒸気機関とかもあったんだ!」
「いや、そーやって、気体じゃ戦えないやないの?」
フェール君は、ほとんど躍りながら。
「原子なら、どこでも入れる。
防水なんて通用しない。
水の一粒よりも遥かに小さいんだからね!」
塔が、ボコンと内側から膨らんだ。
「そして全ての建造物は、内部からの圧力などは計算に入れずに設計される。
いかに、外部からの攻撃に強かろうが、内側から攻められたら!」
塔の別の部分が、ドン、と爆発した。
次の瞬間、一気に四ヶ所で構造分解した赤い塔は、斜めに傾き、そのまま半分に自重で折れた。
「どう!
ミズハねーちゃん、この天才的な勝利は!」
天才は己一人、と歌うようにはしゃぐフェール君。
だが…。
「なかなかやるな!
しかし俺の本体を見たとなれば、もう命はないものと思え!」
魔術師の声と共に、折れた塔の中から炎が吹き上がった。
それは、燃えている、しかし巨人の姿の怪人物だった。
「おー、なかなか面白い本体を考えたもんだね。
エネルギー効率を考えると、アホとも言うけど、決して嫌いじゃないよ」
感心して呟くフェール君。
やはり見た目の強さや派手さを失っては、実用一点張りの、スマートさんのような無味乾燥としたガラクタになる、とフェールは考えていた。
「フェール君。
やっぱウチが戦おうか?」
ミズハが聞くが。
「ナーンセンス!
炎の巨人は良いけど、敵は明らかなミスをしているよ!」
名探偵のように、かけてもいないメガネを押さえながら。
「彼は魔王の話しによればカゲユさんのエネルギーを使って長寿と膨大なパワーを維持しているはずだけど、火炎は現象で物質ではない!
つまり、あの巨人の体にエネルギー受信機は設置できないのさ!」
「じゃあ、どこにあんねん?」
アハハと笑うフェール君。
「十中八九、足元でしょ。
そして機械は水に弱い!」
バン、と盛大なショートが起こり、炎の巨人はよろめいて消えた。
「さあ、行くよお姉ちゃん!」
フェールとミズハがかけていくと、粉々の塔の根元に、みるみる老化していく一人の男がいた。




