もう一人の魔王
ギルド一階の、大理石のロビーを素通りして、二階にあるのがスキル学習所だ。
別に教室とかがある訳じゃない。
大きな椅子があって、頭に円形の機械を乗せて、スキルを、言わばインストールするのだ。
格闘技ならボクシングから柔術まで、さらに剣道とか槍術とかもあり、夜営のためのアウトドア知識や、なぜか歌唱力、なんていう変わり種もある。
僕は、二十の宝箱を得ていた。
中身の機械は、とても貴重な物なので売れないが、箱はアーマナイト製なので、これ自体が、結構なお金になる。
デバイス内の残高は五百万円に増えていた。
さて、とても残念な真実の僕が、この世界で生き抜くためには、パラメータもそうだが、やはり、まず戦闘力の向上だろう。
柔道のスキルは持っているから、空手とか総合格闘技、だろうか?
迷ったが、総合と言えば、たぶん全部なのだろうから、と総合格闘技を選んだ。
これが三万円。
アウトドア夜営術も取って二万円。
ついでに、科学技術知識というのも頭に入れてみた。
これは、イザベラに関して、より知りたいと思ったからだ。
色々見てみたが、とりあえず無駄使いをすると、この世界には身寄りも無い訳で、お金だけが頼りなので、と思ったが、医学だけは、怪我をする恐れもあるのでダウンロードした。
ふむ…。
デバイスを見ると、まだ二時半だった。
「ちょっとレベル上げとお金稼ぎに、出ちゃあどうだい?」
と、いずなが言う。
「そうだね。
なんとか、もう少しレベルを上げないとーー」
言った僕の前に、数名の男が立ち塞がった。
「ウラガスミ様ですね?」
僕が、用心しながら頷くと…、
「私たちは一二人委員会の者です。
もう一人の魔王に、会いたくないですか?」
僕は、黙って見上げていた。




