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記憶喪失のボッチ冒険者  作者: 六青ゆーせー
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町に帰ろう!

荒野を歩いていくと、大きな森が見えてくる。


思い出した。


あれは、シャーレの森。

大変に危険な場所で、レベル50を越えても、一人では近づかない方が利口、という所だ。


このシャーレの森を右手に見ながら荒野を進むと、育成プラントの巨大なドームが、無数に見えてくる。


21世紀人の僕から見ると、近未来型ビニールハウス、とでも言うべきもので、町の近くには、こういうプラントで農作物から畜産、養殖など大抵の物は作れてしまうらしい。


しばしプラントと森に挟まれるように歩くと、人口2万人の超大型ドーム、町、が見えてきた。


町は、堀と城壁に囲まれた、ゲームの中世の都市のようだ。

綺麗な方形に作られている分、尚更、CGめいている。

周囲を堀に囲まれた、透明なピラミッド、それが町だった。


だが、この堀に流れる水は、ただの水ではない。

純水なのだ。


魔法的濾過装置で、常に純水が維持されている。

この純水の中に町を守るバリヤフィルターの発生装置があって、超巨大ドームが維持されていた。


魔法師ではないので、細かい理屈は判らないが、この魔法的装置のおかげで町は守られ、安全な生活が約束されている。


外のノラたちの村の平均寿命が40~50歳なのに対し、町では100歳を越える人も沢山いて、最高齢は172歳のお婆ちゃんで、現役魔法使いだそうだ。


僕は、例によって忘れちゃっているが、たぶん21世紀の日本に帰る予定なので、そんなに長くは生きないだろうけど、幸せに長生きできるっていうなら、それは良いことだよね。


プラントと町の間の窪地にはノラたちの街があり、独特な活気に満ちている。


いい加減な魔法商品やら武器防具の膨大な山。

チープな衣料品。

玩具とも本気とも理解不能な魔法家電。

そして、ちょっと危なそうな大量の食品…。


そんなノラの街を通り過ぎると堀ばたに出る。


デバイスを付けている人間が堀ばたに来ると、すぐに光の橋が発生する。

これも町を覆っているバリヤフィルターと同じ原理で作られるもので、薄い膜のようだが、何十万トンという重さにも耐えられる優れものだ。


堀を渡ったすぐは、落ち着いた料亭のようなものや、カフェの類いが並んだお洒落エリアだ。


実は、町の住人の中には、ノラの文化に興味をいだく人もいて、えてして、そういう人達は文化人だったり、高学歴の学生だったりする。

そういう人達が、こっそりノラの街を眺めながら静かに楽しむ、かなりアンダーグラウンドでハイソなエリアが堀ばたなのだ。


僕は無論、町に出入りはしていても、教養人でもないし、文化にも興味は無いので、横目に見つつゲートに急ぐ。


ゲートとは、堀の内側に設けられた、よく素材は判らないツルツルの城壁の事をさす。

高さは十メートルほどで、全ての道には長方形の開閉口が作られており、これより内側にはデバイスを持たない人間は(そもそも堀が渡れないはずだが)通れない、という事のようだ。


僕は、すぐギルドに行ける、堀端エリアの路地道から車一台通るのがやっとなゲートを抜けていく。


町は、東京、という1500万都市と比べると、遥かに小ぶりなので、全て歩いて見て回ることは出来るが、興味のない所を見てもあまり面白くはない。


やはり、ギルド周辺が僕は好きだ。

白い漆喰壁の、高い塔を持つ建物がギルドで、その周辺には飲食店や雑貨店などが狭い道にびっしりと並んでいる。


この辺には、僕の仲間が大勢いる。


仲間ーー。


僕は、記憶を失っちゃっているんだけどね…。


まぁ、仲間はきっと僕を覚えているはずだしね…。


だいたい同世代の人たちが、やあ、とか久しぶり、とか集まって騒ぐ、ようになってきても、誰も僕に声をかけてくれる人はいなかった…。

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