五百年前
僕は、もうちょっと簡単に、例えば呪文さえ発見すれば、明日は無理でも、そう、数ヵ月後、とかには帰れるものだと考えていた。
だが、まずは、この世界で、自分なりに精一杯生きて、自分と向き合う中で、真実の自分を見つけていくしかないのだ、と言う。
言われてみると正論なのかもしれないけど、なんだか一番キツい道な気がするなぁ。
「無理矢理連れてこられた、と言うのに、帰るのは自力で…、と言うのですか…」
「わたしも、理不尽だ、とは思いますが、マジックには、必ず揃えるべき材料が、必要なのです」
僕は俯いた。
しかし、スーパーコンピューターであるイザベラに言われてしまっては仕方がない。
僕は、暫し考え。
「ではイザベラ。
マイラの町と、イザベラの歴史を教えてくれますか?」
どうせ、聞こうと思っていたので、切り替えて言った。
「前向きで立派だと思いますよ、ウラガスミ。
まず、わたしが生まれたのは五百年程前になります」
「五っ…、五百年!」
もっと最近だと思っていた。
「あなたの世界の核が危険であるように、この世界でも、多くの核の事故が起こりました。
一度などは世界の崩壊を真剣に覚悟しなければならないような、世界レベルの惨事にも見舞われました。
マイラの町を包む水素エネルギーの基本原理は、その頃に開発されたものです。
一度、世界は、本気で核を捨てました。
余りにリスクが高いからです。
それを再び考え直したのは、実は私を作ったドクターマーヴェなのです。
ドクターマーヴェは、アーマナイトの発見と、ハニカム構造を元にした、鉄筋コンクリートより長持ちし、再現性のある建築素材オムニで巨万の富を築くと、核融合炉の建築に没頭したのです。
あなたが会ったホムンクルスを作り上げたことで、ドクターマーヴェは、永遠に安全な核融合炉が出来た、と世界に宣言したのです。
ですが、反発もありました。
ドクターマーヴェは、ポリスやブレーサーやロックワームも生み出し、またシャーレの森にも怪物たちを配置し、安全を高めたのですが、反対派は、ドクターマーヴェが、やればやるほど、反発を強めたのです」




