必ず帰れる
「イザベラ、単刀直入に聞きます。
どうすれば僕は、元の世界に帰れるんですか?」
イザベラは、笑ったようだ。
テレパシーの会話なので、それは嬉しげな心の波、と感じられた。
「ウラガスミ。
それには、自分を思い出すしかありません。
あなたは、自分の名前も思い出していないのでしょう?
それでは、たとえ空間移動が出来たとしても、本当の自分には帰れません。
あなたは、あなたの記憶を取り戻すために、ここで世界と自分なりに戦わなくてはならないのです」
「自分なりの戦い?」
「あなたはイザベラの管理者になった。
また、全てのマジックを理解するマジックキャストでもある。
あなたは今までの二日間で多くを思い出したように、これから自分なりに、自分の正しいと思うことを目指して行けば、やがて自分の全てを思い出すでしょう。
その時、自ずと帰る方法も解るのです」
そうか…。
確かに、今の僕は、この僕の魂が帰る自分の名前さえ判らないんだもんなぁ…。
「自分で考えて正しいと思う道に進む、ですか?」
「そうですウラガスミ。
ここは、あなたが二一世紀で遊んだようなゲームの世界ではないので、死ねば、当たり前に魂は滅びます。
なので、まず、生き残る、のも正解です。
また、ゲームのように正解も不正解も無いので、あなたは敗北から何かを知るかもしれないし、逆に、非常に残酷な自分を見つけるかも、醜い自分を発見するかも知れません。
しかし、あなたなりに戦って行けば、いずれ、自分の全てを思い出すはずです。
その時、空間移動は可能となります。
いいですか。
必ず、死なず、諦めなければ、いつか帰れるのです」




