魔法は一日にしてならず
「ああっ!
それはね!」
と、慌ててトムトムが間に飛び込んできた。
「つまり僕たちも、君のような状態から、そう昨日、別の空間から来た、なんて子に会うのは初めてなんだよ。
彼は、僕らが会った時には、もう、こっちの世界に馴れちゃっていたからさ!」
子、とか、言うけど、トムトムも、どう見ても二十代に届くかどうかだ。
ちょっと口の周りに、ヘロヘロの無精髭が生えているが、ごく細い。
そう言えば、僕も最近、ちょっと口の周りを剃り始めていたのを思い出した。
そうか…。
剃刀もどこかで買わなきゃなー。
僕は、いつか言おう、と思っていたことを話した。
「そう言えば、トムトムの言う、僕の同国人に会いたいなぁ。
色々、相談もしたいし…」
コフィとトムトムは、飛び上がるように驚いたが、
「ま、まあ、そのうちに…。
あなたが、百%、ギルドから切れたなら、会わせて上げるわ」
と、コフィは、大汗をかきながら言い、話を変えた。
「それはともかく、さっさとイザベラの廃墟に行くわよ。
そのために集まったんでしょ」
トムトムも、そうそう、と僕の背を押すようにドゥーム川に歩いた。
やっぱり、どうも、この二人は嘘臭い…。
僕は思ったが、今は、ともかく引き出せるだけの情報を、二人から引き出すのが先決だ。
何も判らないままでは、元の世界に、日本に、帰りようがない。
この世界に来て初めて思ったけど、ここに比べたら日本は、とっても良い国だ。
戦わなくて良いし、何よりアニメもゲームもある。
昨日の夜は、眠かったのもあるけど、何もすることが無かったから、すぐ寝るしかなかったんだ…。
ま、どこに住んでいたのかも思い出せないんだけど…。
そうだね…、と頷き、僕らは河原に降りていった。
近くで見ると、ドゥーム川は物凄く広い。
対岸は、ほとんど一本の線のようだ。
「さあ、渡るわよ」
コフィが言う。
僕は、首を傾げた。
「どうやって?」
「魔法よ。
マジック、ブリッジ、って言うのがあるでしょ!」
「えっ、無いよ」
ここよ! と、コフィがデバイスをスライドさせると、なんと僕が全部と思っていた魔法の横から、ズラズラと列が現れた…。
これじゃあ、数百どころか、数千の魔法があることになる。
よく考えたら、デバイスも魔法で作っているのだから、全ての魔法、と言ったら、そういうものも含まれているわけだ。
天文学的な数字に、僕は少し眩暈がした。




