カテドラル
えっ…、と僕は困惑した。
今までのキャンパさんやコフィやトムトム、それにスピン教団のアシムも、僕が空間移動者だと知っていたのに、たぶん同年代のマクルやリヌは知らないらしい。
「えーっと、魔法で、ここじゃない世界から呼び寄せられて、僕は、
あー、何ヵ月か、何日か前に、この世界に来たんだ。
だから魔法はよく使えるけど、この世界のことは何も知らないんだよ」
マクルとリヌは、顔を見合わせた。
テーブルを挟んで僕の正面に座ったリナが呟く。
「まるで魔王みたいねぇ…」
「リナ」
と、リヌが妹を叱った。
「えと、魔王って言うのは、その…、悪い奴かなにか?」
僕は聞いた。
「スピン教団の伝説では、破壊神ヘーラは、違う世界から呼び出された双子の魔王だと言われてんだよ」
マクルが言う。
「えっ、神を呼び出すの?」
マクルは、さぁ、と肩をすくめた。
「そんなのはさぁ、おとぎ話で、今は誰も、いやスピン教団以外は、誰も信じていないよ。
今、だいたいの人は全能の神パスを信じるってことになってるけどさ、それだって誰も本気で信じてる訳じゃなくって、子供の頃からそうだから、十月には卵を食べない、とか、七月のハーレーイヤーを楽しんだり、そんなことをやってるだけで、じーさん、ばーさんは、教会に行ったりするけど、なぁ?」
と、マクルはリヌに言った。
「そうだね。
老人はナムナムやってるねぇ」
そう言えば、コフィは若者しかいない、とも言っていた。
「老人って、あまり見かけないけど?」
「へー、本当に、何も知らないんだな。
老人は、町の外のカテドラルでデバイスを作ってるんだぜ!」