空間移動者って何なんだ?
僕たちは、夜の町を必死で走った。
スピン教団に入った頃は、まだ賑やかだった町も、今はすっかり寝静まっている感じだ。
道はマクルたちの方が詳しいから、僕は三人について行っただけだけど、今はマップ機能があるので、だいたい町のどの辺にいるかは判る。
油坂通りの奥の、人口密集地の一角だ。
車も入れない狭い路地の中に、三人の住処があった。
入り口は一枚の布が下がっているだけ。
それを捲って中に入ると、居間、兼キッチンの、おおよそ六畳くらいの空間があった。
「まあ、座ってくれよ!」
マクルは、そこが自分の席らしい、一番奥の丸椅子に、とん、と座った。
奥のキッチンにリナは走って、カチリとスイッチを入れた。
リヌが、僕をマクルと自分の間に招いてくれた。
「今、お茶を入れるからね」
へー、この世界に、お茶という概念があるんだ、と思いながら、長椅子に座った。
とても狭いが、暖かい空気の流れている部屋だった。
リナが、カップとポットを運んできた。
この世界のお茶は、紅茶に近い色をしていた。
香り、は…、何かの薬草のようだ。
「有難う、ウラガスミ君。
僕らだけじゃあ、きっとリナを救えなかったよ」
「ううん。
僕も、自分の用を済ませただけだから…」
「ウラガスミの用って、例のハヌマーンの前で襲われた、って事か。
何か用事を済ませたようには見えなかったけど」
マクルは、ズビィー、と豪快にお茶を啜りながら言った。
「アシムも僕の事を知ってるみたいだったし、君達にスピン教の教主がリヒャードだって聞けたし、今のところ、それで十分だよ」
「空間移動者、とか言ってたっけ?」
リヌが言うのに、僕は頷いた。
「あ、そうそう。
ずっと気になってたんだけどさ」
とマクル。
「その、空間移動者って、何なんだ?」