怪我の功名
あまりの驚きに、一瞬、何がなんだか、解らなくなってしまった。
自分が転んだことさえ理解できず、じたばた、と慌てた。
手が床を触って、あれ、床だ! とか、取り乱しながら、思い、それから、あっ、転んだんだ、と、気がついた。
そして僕は、愕然とした。
敵の目の前で、僕は、転んでしまったのだ。
やばい、アシムに殺される!
思わず、固く目を瞑った僕だけど、そこに聞こえてきたのは、相変わらずのアシムの怒鳴り声だった。
あ、潜入、は、まだ切れていなかった。
ゆっくりと目を開けて見ると、アシムはデバイスに怒鳴っていて、彼のマジックポイントも減り続けていた。
よく考えてみると、これじゃあ、たとえマジックポイントが999あったとしても、すぐに底をついてしまう。
今の状態では、とても魔法検知など使える訳がなかった。
他のメンバーも、誰もマジックを使っていなかった。
僕とアシムの距離は…。
驚いた。
目算だが、だいたい10メートルぐらいだ!
転んだお陰で、少しアシムに近づいたみたいだ。
だが、今、マジックを発動しても、アシムに届くかもしれないが、届かない可能性もおおいにあった。
あと、数メートル、近づきたい…。
たが…。
アシムまで10メートル、ということは、アシムの周りにいるスピン教信徒とは、もっと近い、ということだ。
今も、すぐ目の前を、スピン教信徒のサンダルが動いているのに、ここから更に1メートル、2メートルと近づくとなったら、もう、触るぐらいの近さになってしまう!
そ…、そうだ!
転んだのは悪夢のような偶然だが、接近するには、このポジションはなかなか良い。
怪我の功名、僕は、匍匐前進で、敵に近づくことにした。




